大楽
おはようございます。FirstMaker~希望のストーリー~大楽聡詞です。この番組は新しい時代を切り開き、日本に新たな産業を起こそうとしている企業や研究者にスポットを当て、彼らが目指す未来をお聞きし、震災の復興、そして新しい産業のリアルタイムな情報をリスナーの皆さんに感じてもらおうという番組です。この放送は FM 岩手、Date fm エフエム仙台、ふくしまFM、Lucky FM 茨城放送、bay fm以上太平洋沿岸5局をネットしてお送りしていきます。

田巻果奈です。よろしくお願いします。
大楽
今週もこの2人で福島の今を感じるお話をお届けしていきたいですね。
今日のゲスト:株式会社日本遮断技研 木戸さん、株式会社三和製作所 斎藤さん
田巻
今週は福島県郡山市富田町に本社を持つ株式会社日本遮蔽技研に注目していきます。こちらの会社、今社会問題となっている野生動物による田畑の被害、その大きな被害の一つとなっているイノシシだけを捕獲するシステム『あいわな』を開発販売されている会社さんです。
大楽
野生動物による被害のあるところでは高齢化が進んでいるところもあって、駆除できる人が少なくなっているという話も聞きます。全国的な問題となっています。でもイノシシだけを駆除できるというのはどういうシステムなんでしょうね。
田巻
その気になるシステムについて、この後お話を伺っていきたいと思います。ご出演いただくのは、株式会社日本遮蔽技研が全国に向けてサービス展開を開始された『あいわな』、こちらのシステム開発をされた木戸ゆきやさん。そして、『あいわな』を製造されている株式会社三和製作所斎藤社長です。お二人に『あいわな』の開発秘話などを伺っていきます。新型コロナウイルス対策のためリモートでのご出演になります。よろしくお願いします。
株式会社日本遮断技研
https://nipponsyaheigiken.com/
株式会社三和製作所
http://www.3wa-corp.jp/index.html

よろしくお願いします。
大楽
今『あいわな』が設置された写真を拝見しているんですが、こちらのシステム、一件普通の動物を捕獲する檻のように見えます。『あいわな』を製造されてる斎藤社長、これはどういう仕組みになってるんですか。

斎藤さん
写真をご覧頂いてるんで分かるかと思うんですけども、通常の箱罠の前にですね、小さな黒いポールとカメラがついているものがついてるんですね。カメラの方で中に入ったものを判断して罠を閉めると。そういった仕組みになっています。
通常は罠に動物が入ると、前足ですとかエサを食べたときとかっていう物理的なアクションでもって罠を閉めますので、それがイノシシであってもタヌキであってもサルであってもクマであっても、罠は閉まってしまうんですね。そういう形ですと、自分たちが望まない、今回の捕獲対象でない動物を捕まえてしまうんですけども、今回我々の方はそのカメラの方にインテリジェントな機能としてAI、繰り返し繰り返しイノシシの画像を覚え込ませて画像認識システムを入れまして、イノシシと認識した場合にのみ閉めるといったようなシステムになってますので、罠をかける人にとっても非常に便利でロスの少ない仕組みになってるとは思います。
大楽
イノシシだけをちゃんと区別するってのはすごいですよね。
斎藤さん
そうですね。基本的にはイノシシには例えば夏と冬では毛の生え方が違ったりとかっていうことになりますので、様々な写真データでもって教師データを作って勉強させたデータでもってイノシシとして判断させるというような仕組みで閉めることにしています。
田巻
AIの技術すごいですね。このあいわなを使うとイノシシだけしかも親だけを認識するということですが、イノシシだけを認識することのメリットってどういったところなんでしょうか。
斎藤さん
今回箱罠を例えばイノシシ用に設置した場合、(その罠に)クマがかかった場合逃がさなきゃいけない。対象の動物以外は逃がさなきゃいけなかったりとか、大型動物がかかった場合にその罠を設置した人に危険が及ぶこともあったりするんですね。そういったことを避けるためにも、対象としている動物だけを確実に認識して捕まえるといったことで、罠を設置している方にとっても、そういった動物を少し自然界の中で制御したいといった方たちにも非常にメリットがあるものになるかと思います。

大楽
このあいわなの開発から製造までどんなご苦労がありましたか。
木戸さん
自然界のイノシシの画像データってなかなかなくて、イノシシの画像データをとるために動物園とか取材に申し込みまして、撮影しに行ってまいりました。
田巻
どの位の写真撮られたんですか。
木戸さん
静止画と動画も撮ってきたんですけども、大体静止画で17000枚ぐらいは撮ってまいりました。
大楽
17000枚って1日で撮れるものなんですか。撮影って何日かに分けてですよね。
木戸さん
実はイノシシの画像データにも、先ほど斎藤社長がおっしゃったAIに学習させるための、間違い画像というのを撮らなきゃいけなくてですね、例えばイノシシ以外の動物の画像も覚え込まさなきゃいけないものですから、そのデータもいっぱい撮って覚え込ませたという形です。
大楽
その集めた膨大なデータを切り出していったのが斎藤社長だというふうにお伺いしてるんですけど。
木戸さん
そうです。斎藤社長のほうでAIの学習データを切り取って深層学習をさせて、AIの精度を上げていったという形になります。
大楽
今の簡単に精度を上げてあの切り出していったってお話しされてるんですけども、どのくらい時間がかかって、期間であったりとか、ご苦労とかってあったんですか。
斎藤さん
AIって聞くと何でもできるスーパーマンみたいな印象ありますけども、基本的にはイノシシじゃないものが認識できないので、イノシシじゃないものをこれはイノシシじゃないんだよっていうこと教えてあげなきゃいけない。これがイノシシだよっていうことが分かっても、これがイノシシじゃないことはわからないと基本的に判別できないので、AIの教師データを作るときはネガティブデータとポジティブデータ――要は正解のデータと不正解のデータ両方勉強させるんですね。
どちらかというとイノシシのデータは大体1/3くらい。2/3がネガティブデータ、教師データで言うところの不正解になります。例えば車の絵を見たときに「これが車」っていうことは分かりませんので、イノシシじゃないのかどうかっていうことだけは判断させなきゃいけないので、車のデータも必要ですし、通常カメラに映る範囲のデータで物体として動く可能性のあるものは大体勉強させておかないと、誤認識になっちゃうんですね。だからそういったところの苦労がちょっとあります。大体PCのスペック、画像データの大きさにもよるんですけど、長いと3日とか4日、教師データを作るのにかかります。それで最後のデータができたらきちんと教師データができてるかどうかっていうのはちょっと開けてみないと分からないのと、どのくらい認識率を示すのかっていうのは実際にテストしてみないとわからないところもあります。AIのデータをオリジナルで作っていくっていうのは地道な作業にはなります。
『あいわな』の活躍
大楽
今週は福島県郡山市富田町に本社をもつ、日本遮蔽技研に注目してお話を伺っています。AI搭載のワナ連動警報通信システム『あいわな』。全国からもお問い合わせや反響があると思いますが、実際に利用されている方からどんな声が届いてらっしゃるんでしょうか。
木戸さん
福島県の中で実際実証テストを経て導入していただいたのは地元郡山市さまで、1台導入していただきました。自治体さんというところでは、実績がないとなかなか運用という形に導入していただけませんので、それがプレス発表をしたところ、全国からの問い合わせがありまして。南は九州の熊本県、福岡県。それから中国の広島。あと三重ですね。そんな形でほぼ全国から問い合わせが来ている状況です。
大楽
イノシシで困っている方が全国にいたということですもんね。
田巻
素朴な質問なんですが、このあいわなは、AIの画像データを例えばシカとかクマとかの画像に認識させたら、今後の活用の幅が広がるような気がするんですけどいかがでしょうか。
木戸さん
そうですね、これは4年間の実証とテストの中で一番最初に一番被害が大きいイノシシの画像で始まったんですけども、イノシシの次はクマを勉強させてまして、今クマのシステムを構築中です。その次に被害が大きいのがサル。全国的に一番被害が大きいのはシカなんですね。
各自治体さんなどからイノシシ以外の画像認識のシステムを早く完成させてくれということで今問い合わせが多くなってきています。特にクマは人的被害がかなり大きいものですから、人命にかかわるということで、例えばクマの警報装置ですね。カメラだけつけてクラウドで判断させて警報を一斉に出すというシステムをやっぱり作ってくれと言われてまして。例えば学校の子供さんの送り迎えが、やはりクマが出たってなりますと保護者の方が送り迎えしなきゃいけないと。そういう事情も多々あるものですから、リアルタイムで今ここにクマが出ましたよ、次ここに出ましたよっていうルートが分かれば、子供さんの安全にもつながるということもございますので、そういった形でクマの警報を早く作ってくれと言われております。
大楽
今本当に簡単にクマバージョン、サルバージョン、シカバージョンっておっしゃってましたけど、その都度やはりその動物自体の動画を撮ってまたAIに覚え込ませる作業をしなくちゃいけないですから、まだまだ簡単なことではないということですね。
木戸さん
システムが出来上がるまではかなりコツコツとした地味な作業の繰り返しですから、画像の収集と学習、それを製品化させるのにかなり時間がかかっております。
大楽
今回イノシシということでしたが、イノシシの習性って結構変わってて、檻の中に来るまでも通常とは違うというふうにお伺いしたんですけど。
木戸さん
イノシシは非常に憶病な動物でして、普通夜しか出ないって皆さん思われてるんですけど、本当は夜型じゃないです。非常に憶病なんですけども非常に頭がよくて、例えば罠の方に餌が置いてあるんですけども、親はまっすぐ餌を食べに来ないんですね。子どものイノシシ、うり坊を先に食べさせて、罠が下りなかったら安心ということで親が入ってきて食べていくという形で、非常に学習能力が高くて、子どものイノシシが檻の中に入って餌食べててガツンと扉が閉まってしまいますと、ここは危険だなって近寄らなくなります。
ですので、ある自治体さんなんかは年間2000頭くらいを捕獲されてるんですけども、半分以上が子どものイノシシです。ですので非常に効率が悪いんですね。イノシシの出産頭で言いますと大体5~6頭が普通です。そのうちの半分は死んでしまうんですけども、3頭は生き残りますんで、どんどん増えていく一方なんですね。そこであいわなを使いますと、子どものイノシシは捕獲しないで、親が入ってきて餌を食べるときに捕獲するということができます。そういったことで捕獲数も増えていって、生息数も減っているかなあという感じですね。
大楽
色々斎藤社長と木戸さんにお伺いしました。お二人ありがとうございます。今週は株式会社日本遮蔽技研が開発するAI搭載の罠連動警報通信システム『あいわな』に注目してきました。来週もお話伺ってきます。よろしくお願いいたします 。
エンディング
今週は株式会社日本遮蔽技研が全国に向けてサービス展開されたAI搭載の罠連動警報通信システム『あいわな』についてお話を伺いました。
田巻
来週も株式会社日本遮蔽技研さんの取り組みについてお話伺っていきます。是非お聞きください。
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