大楽
FirstMaker~希望のストーリー~。大楽聡詞です。この番組は新しい時代を切り開き日本に新たな産業を起こそうとしている企業や研究者にスポットを当て、彼らが目指す未来をお聞きし、震災の復興、そして新しい産業のリアルタイムな情報をリスナーの皆さんに感じてもらおうという番組です。この放送はFM岩手、Date FMエフエム仙台、ふくしまFM、LuckyFM茨城放送、bayfm以上太平洋沿岸5局でお送りしていきます。

田巻果奈です。よろしくお願いします。
大楽
今週もこの二人で福島の今を感じるお話をお届けしていきましょうね。
今日のゲスト:ミツフジ株式会社 三寺歩さん
田巻
今週は福島県伊達郡川俣町に工場を持つ、京都西陣織を祖業とするミツフジ株式会社に注目していきます。
大楽
京都西陣織の会社がなぜ福島に工場を?ということですよね。
田巻
そうなんです。その繋がり、皆さん気になりますよね。2週にわたってご紹介・紐解いていきたいと思います。ご出演頂くのはミツフジ株式会社代表取締役社長三寺歩さんです。新型コロナウイルスの対策のためリモートでのご指定になります。三寺さんよろしくお願いします。

よろしくお願いします。
田巻改めてミツフジ株式会社についてご紹介します。
京都府精華町に本社を置くウェアラブルIoT企業です。創業は1956年。伝統的な西陣織の帯工場として創業。後に着物産業の斜陽化に伴いレース生地や布団カバーなどの装飾雑品などを手掛けるようになりますが、繊維産業の衰退と共に新たな事業を模索しました。
そして銀メッキ繊維に出会い、自社で研究開発を行い、銀メッキ繊維の抗菌防臭機能に着目し、医療の繊維として広く開発製造を開始しました。
2002年に機能性繊維として話題になった銀メッキ専用AGposs®を発表。2008年にはそのAGposs®が国際宇宙ステーションにおける宇宙飛行士の下着素材として採用され、話題になりました。
現在は銀メッキ繊維の持つ優れた導電性に着目し、着るだけで体の状態がわかるウェアラブル製品を手がけ、福島工場がある川俣町で生産をしています。地元住民の健康管理にもミツフジ株式会社さんの製品は深く貢献。その取り組みが広く注目されています。世界で唯一の繊維からクラウドまで開発製造を手掛けていらっしゃる企業です。
ミツフジ株式会社|生体情報で、人体の未知を読み解く
https://www.mitsufuji.co.jp/
大楽
三寺さんはミツフジ株式会社の三代目ということですが、創業開始から65年、京都の老舗の西陣織の会社が、今は世界で注目のウェアラブルIoT企業という素晴らしい企業成長を遂げていらっしゃいますよね。しかしお話を伺ったところ、一時は倒産の危機もあったということなんですが、どのように巻き返したのかその辺りをお伺いしてもよろしいでしょうか。
三寺さん
私がこの会社を継いで社長になったのが2014年の10月なんですけれども、私それまでは普通にいわゆる外資系の会社で営業やってたんですけれども、ある日営業して働いてた時に突然父親から電話かかってきまして。「今月でもう会社倒産や」って。どうしたって話を聞いたら「お金がないんや」と。もう一つが、「会社潰れたの、お前も責任あるぞ」みたいな、全く私に責任ないんですよ、全然違う会社で働いてたので責任ないんですけど、それで会社を継いでくれってことを父親なりに、潰れるから継げっていうのもすごい話だと思うんですけども。
で私三代目ということで、祖父が(会社を)創って、祖父が元々西陣織の職人だったんですね。でこの仕事を始めてそこから父親が新しい仕事もいろんな新しい繊維に挑戦して、で私に継ぐんですけれども。会社に行くとなんじゃこりゃみたいな連続ですよね。もう本当にお金無かったですし、とんでもないことになってるなと思って。ひたすらどうしようかなっていうのがあったんですけど、ただ一つだけ、この会社いろんないいところあるんですけど、本当に強いものがあったんですね。光るものがあったと言うか。それが父親がずっと20数年かけて取り組んできた銀メッキ繊維という糸ですね。この糸を父親は「世に出したい、でも自分だけでは広げられなかった」というのは本当に悔しい思いをしてたと思うんですけど、継いだ人間としてこの糸には非常に価値があるっていうことと、この糸が社会に受け入れてもらえなかったら本当にこの会社はそのタイミングで終わる時なんだろうなと思って、じゃあ最後の勝負はこの糸にかけようっていう気持ちで、すごい集中をして取り組みをするということになりました。
大楽
今のご説明いただいたようにミツフジ株式会社様の方ではこの銀メッキ製品の特性を生かしたウェアラブルデバイス、医療用の検査着などの開発を手がけていますが、この銀メッキ繊維のAGposs®、改めてどんな機能そして特徴があるのか教えていただいてもよろしいでしょうか。
三寺さん
AGposs®という糸は抗菌の特徴がありますね。銀メッキ繊維、糸が抗菌防臭の効果を持つ糸になります。もう一つがここが私が三代目になって挑戦したところですけれども、電気を非常に通しやすいという導電性の機能があります。この大きな二つの特徴がある糸になりますね。
大楽
今スタジオの方にもその生地が手元にあるんですけど、正直銀メッキの繊維ってもっと硬いと思っていたんですよ。それが触った感じでは銀って言われないとわからない。そしてこんなに伸びるものなのかっていうのに驚きました。

田巻
そうなんですよ。それに肌触りも凄い良いですよね。全然イメージと違いました。
大楽
ここまでたどり着く過程で色んな問題点とかご苦労があったんだろうなと思いました。
三寺さん
そうですね。今おっしゃっていただいた肌触りがいいっていうのも、単純に普通に作ればそんなに肌触り良くないですし、今伸びるって言っていただきましたけどこれ伸びても導電性の性能が変わらないんですよ。要は伸びた状態であのお客様には着ていただくんですけど、伸びた状態でつけても導電性も性能も変わらないってかなり難しくてですね。使い心地と機能、要はデータを取るって機能を両方満たさないといけないというところに開発の難しさがありました。
大楽
そしてこのAGposs®を使ったウェアが福島県川俣町の住民の方々の健康管理に役立っているということなんですよね。このお話、後半伺っていきたいと思います。
ミツフジ株式会社と福島県、健康管理実証事業
大楽
ミツフジ株式会社代表取締役社長三寺歩さんにお話を伺っています。ここからはミツフジ株式会社と福島の関わりについて伺っていきたいと思います。まずはミツフジ株式会社が福島県伊達郡川俣町に工場を設立されたことになった理由からお聞かせいただいてもよろしいですか。
三寺さん
はい。2016年に初めて川俣町にお伺いしました。ちょうど2016年というのは私の祖父が会社を作ってから60年目にあたる年で、いよいよウエラブルの製品を世の中の方に使って頂きたいということで工場を作らないといけないという状態になりました。
実は2008年に私の祖父がずうっと製品を作ってきた町工場が、祖父の死とともに閉鎖する、売却するということになって、次の自分が社長になった挑戦としてその町工場を蘇らせるっていう目標があってですね。
その目標を達成したいと思って色んな所に工場を作れないかなということで回っていた時に川俣町の皆様にご紹介いただいて、当時の役場にお伺いしました。その時に、実は川俣町には伝説があって。川俣町の絹の織物の技術をさらに進化させるっていう必要があった時に3人の若い人が京都の西陣に行って技術を学んで帰ってきて、川俣の産業の発展に寄与してくれたと。ご存知の通り繊維の産業今厳しいですけれども、川俣町も厳しい中で皆さんが挑戦している中で、京都の人たちと接点があって京都の人たちと一緒に川俣で新しい産業、新しい繊維を作れたのがすごく嬉しいですということを言ってくださって、きっとここにご縁があるのかなと勝手ながら思ってそういうきっかけでいろんな皆様に調整いただいて工場を設立するということになりました。
大楽
そういう過去があって現代に伝わってるんですね。川俣町の方では健康管理実証事業というのも行われていると伺いました。どのようなものなんでしょうか。
ミツフジの「健康モニタリングサービス」が地域復興実用化開発等促進事業費補助金に採択決定
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000020122.html
三寺さん
そうですね、今もうまさにこの社会課題になっている少子高齢化の中で、高齢化とあとは一人暮らしの高齢者の方が非常に不安を持って暮らしているという問題を、川俣で物を作って川俣の町の方々に協力いただいて、いわゆるその土地で作ったものを土地で開発をしてそして世界に挑戦しようというプロジェクトとしてスタートさせていただきました。ですから川俣の工場で福島の地元の人々が従業員として働いて、彼らが作った商品をまた地元の川俣の方が協力してくださってデータを取ったり、どうやって少子高齢化の社会課題の役に立つ製品になるかっていうような製品開発のプロジェクトを立ち上げさせて頂いて、町の皆様に大変なご協力いただいて取り組みをしているというのがこのプロジェクトになります。
田巻
ちなみに川俣町の工場ではどんな製品が製造されているんですか。
三寺さん
ご紹介をしたウエラブルの製品、hamon®というシャツですね。
スマートウェアと言われているシャツの開発から製造までをこの工場の中で行っています。でこのシャツが生体情報を取ることができますので、その情報をとったデータの分析などもこの工場の中で行っています。

hamon®
hamon®
大楽
生体情報って具体的には僕たちの体の何をとるんですかね。
三寺さん
そうですね、このシャツは心拍波形と呼ばれているデータを取ることができます。皆様がよく病院で心電図を健康診断などで取られると思うんですけれどもそれに近いデータになります。
大楽
その心拍数をとることによってどういったことがわかるんですか。
三寺さん
波の形とか波の状態を見て今こういう例えば体調に変化がありますといったような分析をすることができるようになります。
田巻
ちなみに体の状態を通知するにはどのような形で我々に通知してもらえるんですか。
三寺さん
服がデータを取りますんで、取ったデータが電子機器が付いていますのでその機械からBluetoothと呼ばれる無線を使ってスマートフォン、携帯電話に情報が飛びます。だからスマートフォンでご自分の体調状態を確認するということも出来ますし、この川俣のプロジェクトではそこからいわゆるその管理センターみたいなところにデータが飛んで、住民の方でみなさんもしくはその例えば働いてる方皆さんの体調状態をリアルタイムで確認をするということができるようになっています。



大楽
心拍数を測ることによって僕たちの体の中の状態というのを可視化することができて、皆さんで共有して、自分だけではなくて他の人たちもそれを見ることができて、お互いに心配しあえるというか、気づけるシステムということですかね。
三寺さん
そうですね。わりと健康管理って人から見られているとか人から監視されてるっていう後ろ向きな見え方もするかもしれないんですけれども、実際使ってみていただくと自分の体調の見える化ができているとか誰かに見守ってもらって安心があるとか、意外とそういう前向きな意見もいただいて、今役立てて使って頂いております。
大楽
日本人って頑張って仕事をしてしまう風潮があったりもするので、他の人たちに自分の心拍数であったりとかを見て頂いて状況を見てもらえる、管理してもらえる、そういうのってこれからの社会にはすごく必要なんじゃないかなと思いますけどね。
三寺さん
今はまだ実証実験段階ですけれども将来的にはかかりつけの先生の病院につないでいただいて、病院の先生がリアルタイムに患者様の交代超状態を見るとか、そういう仕組みもできるようになると思います。
大楽
手元の方にもちょっとあるんですけど、普通の服ですよね。
三寺さん
そうですね本当に。胸のところのところにちょっとそのデータ集積のあのタグみたいなのはついてますけど全然違和感がないというか。昔と同じようなヤツを想像してた時、体中に機械を巻きつけてるようなイメージがあったんですよ。まったくそういうのではなくてこれで本当に僕たちの体(のデータが)とれるんだ、って。
田巻
本当ですね。しかもびっくりしたのが、色々な種類があるんだけど赤ちゃん用、お子様用もありましたよね。このお子様用が、ポケットで触れないようになってるんですよ。


大楽
子供がいたずらできないようになってるんですよ。
田巻
子供が取って食べちゃわないように貼り付けられてたりとか、すごい工夫されてるなと思いました。
大楽
さて今回は事業内容、そして福島との関わりということでお伺いしました。ミツフジ株式会社代表取締役社長三寺歩さんにお話を伺いました。来週もこの続き伺っていきます。三寺さん、来週もよろしくお願い致します。
三寺さん
よろしくお願いします。ありがとうございました。
エンディング
今週はミツフジ株式会社代表取締役社長三寺歩さんにお話を伺いました。
大楽
田巻さんいかがでしたか。
田巻
元々あったものに手を加えて新しいイノベーションを生み出しているっていうところが、今一番求められている企業だなって思いまして。就活中の私にとっては、私も入りたくなりました。
大楽
僕は三寺さんがまっすぐ家業を継ぐのじゃなくて、一旦外に出て客観的に家業であるミツフジ株式会社を見ることができたからいろんなものを築いたんじゃないかなっていうのを感じましたね。
来週もミツフジ株式会社代表取締役社長三寺歩さんにお話を伺っていきます。来週もぜひお聞きください。
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