【南相馬市産業創造センター】2021年1月9日放送分

大楽
おはようございます。FirstMaker~希望のストーリー~。大楽聡詞です。この番組は、新しい時代を切り拓き、日本に新たな産業を起こそうとしている企業や研究者にスポットを当て、彼らが目指す未来をお聞きし、震災の復興、そして新しい産業のリアルタイムな情報をリスナーの皆さんに感じてもらおうという番組です。

そして番組アシスタントはこの方です。

田巻果奈です。よろしくお願いします。

大楽
お願いします。2021年今月から番組の放送エリアが広がりました。昨年まで放送していた福島、茨城だけではなく、岩手、宮城、そして千葉と太平洋沿岸地域の皆さんにも広くお届けしていきます。
さあ田巻さんと僕でお送りしていきますが、改めて簡単に僕たちの紹介をさせて頂きますと、二人とも福島県いわき市出身で、僕がフリーパーソナリティ、そして田巻さんは大学生というコンビです。これからの日本や各地域が元気になるために頑張っている方、企業にお話をうかがい、リスナーの皆さんの明日の活力になればと思っています。

田巻
はい。これから成長する産業などのお話から、皆さんにとってこういう会社で働きたい、日本の産業ってこんなに進んでいるんだ、と思っていただけたらと思います。 ということで、今週は、先週お送りした福島ロボットテストフィールドから車で5分ほど移動した南相馬市産業創造センターに来ました。それでは早速お話を伺いましょう。

南相馬市産業創造センター 木村浩之さん

大楽
南相馬市産業創造センター所長木村浩之さんです。よろしくお願いいたします。

よろしくお願いします。

大楽
よろしくお願いします。木村さんとは昨年11月にロボット航空宇宙フェスタ、あちらの方でお会いしましたよね。お話をお伺いしまして。

木村さん
会場でも本当にお世話になりました。

大楽
いえいえこちらこそ、色々ご説明頂きありがとうございます。

木村さん
賑やかな一団がいたなあと思ったら。皆さん非常に目立っておりましたよ。

田巻
ほんとですか。

大楽
すごくボリューム小さくしゃべったんですけどね。田巻さんがうるさかったんだ。

田巻
いや大楽さんに違いない。

大楽
それは置いときまして、木村さん、この南相馬市産業創造センターというのは一言で言うとこれはどういう施設なんでしょうか。

南相馬市産業創造センター
https://mic-info.org/

木村さん
こちらの産業創造センターは、入居している企業の方に対する様々なインキュベーション、シェアードサービスを提供して成長を促すための施設です。
この施設の東側にロボット産業のためのロボットテストフィールドというのが、世界でも類を見ないような施設があります。その整備効果を最大限に発揮するために、この施設は貸工場貸事務所を営んでいます。そして単なる貸工場と貸事務所ということだけではなくて、そこに入っているベンチャー企業の皆さんがより自分の目指す方向に早くたどり着けるように色んな支援をする、というのがこの施設の特徴になっています。
実はベンチャー企業という方々は非常に優れたアイディアと優れた知見を持ってるんです。しかし、例えば部品を作るのが苦手だとか、モーターの部分は他の人にお願いしたいとか、ねじから製品までというような所までは行かないんですよ。そこで、必要な部材を集めるのを協力する必要が出てきたり、あとは特許関係の部分についても、特許に対する知識やなんかが不足しているために本当の十分な利益を得られないとか、そんなことがないように色々とサポートしてあげたりと、いろんな分野にわたって結びつきをすると。そのことが地元の元々あった事業者が潤うことにもなると。そういう考え方をしています。

大楽
なるほど。そうするとそういう企業のバックアップをされているということですよね。

木村さん
その通りです。私達の方で心がけているのは、南相馬市には震災直後からロボット産業協議会という地域の部品産業が集まって、そして未来を作っていこうというような協議会が立ち上がっています。そちらのところは、実は県のロボット産業協議会よりも3年も早く立ち上がったんですよ。

南相馬ロボット産業協議会
http://minami-soma-ric.jp/
ふくしまロボット産業推進協議会
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/32021f/robot-conference.html

大楽
早っ、それっていつぐらいですか。

木村さん
2011年の12月に立ち上がりました。

大楽
じゃあ震災の年からも1年経たないうちですよね。

木村さん
その通りです。どうしてロボットかと言うと、原発の現場、被災した現場は、人間が入って行くと死ぬからです。なので遠隔操作で機械でやるしかない。その技術は遠隔操作技術であり、ロボット技術でしょうと。そうすると私たちが地域で今まで磨いてきた様々な技術、機械金属の加工の技術、ネジを作る技術、板材を作る技術、ギアを作る技術、そういったものがロボットの方に反映されていくという成長線であれば、他の誰も考えてないし、先に進むことができるな、しかも原子力発電所事故の最先端の場所ですから、現場で困ったと言った時に真っ先にこちらから供給できるというメリットがあるんです。

大楽
是非あの新しい風を吹かせるため、木村さん、これからも頑張っていただきたいと思います。お時間いただきましてありがとうございました。

田巻
ありがとうございました。

木村さん
ありがとうございます。失礼します。

株式会社スペースエンターテイメントラボラトリー 金田政太さん

大楽
具体的にはどのような活動をしているのか、南相馬市産業創造センターに入居している企業にお話をお伺いします。まずは株式会社スペースエンターテイメントラボラトリー金田政太さんにお話をお伺いします。よろしくお願いします。

株式会社スペースエンターテイメントラボラトリー
http://www.selab.jp/jp.html

よろしくお願いいたします。

田巻
お願いします。

大楽
金田さん、スペースエンターテインメントラボラトリーさんて、SELさんていう風にお呼びしても大丈夫ですか。

金田さん
はい、そうですね、ちょっと社名長いので略していただければと思います。

大楽
ありがとうございます。このSELさんの概要、研究開発、これは何をされているんですか。

金田さん
そうですね、今私たちが南相馬で特に行っているのが、飛行艇型のドローンというものを開発しています。

大楽
飛行艇型のドローン。通常のドローンだと、プロペラ部分っていうんですかね、あれが4つついてる、というイメージなんですけど、それとは違いますよね。

金田さん
そうですね、まずドローンといわれるとそういったものを想像される方多いと思うんですけど、我々が開発している飛行艇型というのはですね、まず第一の特徴としては飛行機のような形をしていることです。で、飛行機と同じように大きい主翼を持っているので飛んでいる時の効率が非常に良いと。なのでその一般的なマルチコプター型、プロペラがいっぱいついてるものに比べると、長い時間長い距離を飛ぶことができるというのが1つ目の特徴になります。

大楽
長い時間というのは、具体的にどのぐらい違うんですか。

金田さん
そうですね、一般的なそのマルチコプター形のドローンだと数十分とかが多いと思うんですけれども、そういう飛行機の形をした固定翼型にすると2時間、我々の期待でも2時間連続で飛ぶことができる、同じ電動でですね。そういうものもあるという。

大楽
これは同じ電力というか、それでそのくらい違うということですよね。

金田さん
そうです。バッテリーは同じです。人が乗るような飛行機とかでも想像してもらえると同じなんですけども、飛行機とヘリコプターって、飛行機の方が遠くまで行くものじゃないですか。用途によって使い分けていくっていうのがいいのかなという風に我々は思っているので、ドローンも、ヘリコプターのような回転翼、マルチコプター型もあれば、飛行機、固定翼型というのも使い分けることによって、よりドローンが社会の役に立っていくんじゃないかなという風に思ってます。

大楽
そういった中でこの南相馬市で実証実験とか行ってると思うんですけど、どうしてこの南相馬市を選んだんですか。

金田さん
そうですね、南相馬市を選んだ理由は、我々元々東京の会社になるんですけれども、ドローンだったりとかを取り扱い始めた時に、ドローン関係のニュースって色々入ってくるんですが、割と「南相馬市でこんな実験しました」とか「南相馬市でこんなことできました」というようなニュースが凄く多く入ってきました。で、「あれ、もしかして東京だと飛ばせないけど南相馬市に行けばいろんなドローンの実験ができるんじゃないかな」っていうことで我々来てみて実際色々見てみたんですけど、それが実現できる場所だなという風に思って我々こちらに進出させて頂いてですね、今やっているというような状況です。あの例えば僕ら漁協さんというか漁師さんに協力してもらいながら実験することもあるんですけど、漁師さん達も普通にドローンのことすごい詳しくて、

田巻
漁師さんもですか。

金田さん
そうなんですよ。今回はこういうドローンを持ってきたからみたいな感じで。

大楽
「こういったドローンを持ってきたから」ってなかなかないですからね。

金田さん
日本全国こんなにドローンのこと詳しい漁師さんたちがそろってるの、多分ここだけなんじゃないかなというふうに思いますね。すごく楽しそうですね。

大楽
そっかー。次はちょっと持ってこようかな。

金田さん
割とこの浜通り地域は山もあれば海もあるし、色んな景色が空から楽しめるっていうのも魅力じゃないかなと思います。

大楽
産業用ドローンということですけど、その作られたドローンってどういったものに利用するんですか。

金田さん
そうですね、私達が開発してる飛行艇型ドローン、先ほど1つ目の特徴をご紹介したんですけど、2つ目の特徴が、水上、水面から発着できるっていう特徴になります。

田巻
水面から。

金田さん
そうですね。それは固定翼、飛行機型のドローンの弱点である発着場所を解決したいということで、日本で平らで開けた場所ってなかなかないんですけど、あの水面、例えば川とか湖とか海っていうのは平らで開けていて、日本にも豊富にある場所かなという風に思ったので、我々の機体は水上から飛び立つことができるという、ちょっと特殊な機体になっています。

大楽
すごいですね。

金田さん
なので、その水上発着の特徴を活かして、ぜひですね、今のところあまりドローンの利活用進んでない、水辺というか、特に海とかでですね、ドローンの利用を進めて行きたいなというふうに考えていて、水産業界を調査であったりとか警備救難ていうとこで役に立てたらいいなというふうに考えてます。

大楽
そうするとホバークラフトみたいな感じ。

金田さん
そうですね、一番分かりやすい例で言うとですね、スタジオジブリが作ってる『紅の豚』っていう映画があるかなと思うんですけど、あれでポルコが乗っているあの飛行機で海とかをこうばーっと走って離陸すると思うんですけど、あれと同じように我々の機体、飛んで行きます。なので、ある程度広い水面があれば発着ができるという特徴が他ではない特徴になるかなという風に思っていますね。

大楽
最後に、どういった形でこの南相馬で仕事をしていきたい、そういうビジョンとかってありますか。

金田さん
そうですね、南相馬はですね、本当に先ほど言ったようにロボットの事を皆さん市民の方たちもすごく知っている町です。で、なおかつ日本中から新しいロボットを作ってる人たちが集まってきているので、例えば街を歩いていても他の事業者さんがドローン飛ばしてたりとかですね、陸上走るロボットの実験していたりっていうのがあって、自社で開発してるロボットもそうですけど根本的にロボット大好きなので、いるだけで楽しいっていうところなので、もっともっとどんどんそういう事業者が集まってきて、ほんとに未来の街みたいなのが、南相馬にひろがっていくと面白いなと思ってるので、盛り上げ役のひとつとしてうちも頑張っていきたいなという風に考えています。

大楽
わかりました。何かすごい夢がありますよね。

田巻
本当ですよね。

大楽
本当に南相馬って夢があって。ぜひ僕も今度来るときはドローン持ってきたいと思います。

金田さん
ぜひ。すごい綺麗な景色色々広がってますので飛ばして見てください。

大楽
わかりました。どうもありがとうございます。株式会社スペースエンターテイメントラボラトリー金田政太さんにお話をお伺いしました。ありがとうございました。

金田さん
ありがとうございました。

田巻
ありがとうございました。

株式会社メルティンMMI 足立奈菜子さん

FirstMaker~希望のストーリー~。後半はもう1社、南相馬市産業創造センターに入居している株式会社メルティン MMI 足立奈菜子さんにお話をお伺いします。足立さんよろしくお願いします。

株式会社メルティンMMI
https://www.meltin.jp/

よろしくお願いします。

大楽
まずはメルティン MMI さんの企業概要、具体的にはどういった内容なんですか。

足立さん
はい。わたくしたちの技術、コアの技術が2つありまして、生体信号を読み解く技術と、もう1つがロボット、普通に想像されるロボットなんですね。それを融合させた、2つがマッチすれば、サイボーグ技術が実現できると考えております。

大楽
セイタイって、この声の声帯ですか。

足立さん
のどとか筋肉の動きを読み解く生体もあるんですけども、(漢字は)「生きる体」になりまして、全ての体の信号ですね。

大楽
そういうのを読み取って。

足立さん
そうですね読み取って、筋肉とかの動きを全部読み解く、ということになります。

大楽
ロボット航空宇宙フェスタふくしま2020の時に田巻さんがメルティンさんのブースで、遊んでるわけじゃないですけど……腕を動かしてましたよね。

田巻
ありましたね。ちょうどその技術のロボットがいたんですよね。

大楽
ロボット自体って、通常だと僕たちは例えば昔からゲームとかやってると、コントローラーがあって初めて動かせるとか、そういうのはわかってたんですけど、メルティンさんのは、空間上で指を動かすと勝手にその動きを読み取ってくれて、2mくらい前にある機械が同じようなことをしてくれるから、びっくりして。え、何だこれって思ったんですよ。

田巻
下か横にセンサーがあったんですよね。

足立さん
そうですね、下に赤外線のセンサーがあります。それを読み取って、それの動きに合わせて腕が動く。この弊社の一番の強みが、”手”なんですね。手の繊細な動きが強みになってまして、本当に人の手と同様の動きができます。

田巻
これはもう完成品とかはあるんですか。

足立さん
はい。あります。2020年3月に発表したMELTANT-βがあります。

大楽
これってどんな所で使うんですか。

足立さん
こちらはですね、危険環境を想定したアバターロボットになっておりまして、直近ですと廃炉関係も目指してまして、人は入れないような危険な環境にロボットを投入し、そこで作業するという。

田巻
作業もできるんですね。

足立さん
そうですね、人の手ってとても大事な動きで、5本でしかできない作業、細かい作業を人の代わりとなってやっていくっていうの目指してます。

大楽
そしてメルティンさんは本社が東京なんですけど、研究開発拠点を南相馬市産業創造センターで活動してますけど、これはどういった理由があるんでしょうか。

足立さん
私たち実証実験をする場所っていうのを探しておりました。都内ですと、ロボットを動かせる場所っていうのはなかなか限られている、というかほぼ無いに等しいんですよね。そういう中で見た時に、南相馬市はロボットテストフィールドができ、常に地元企業様とも連携しておりまして、部品の調達でしたり、やはりその場で実証実験を行ってから不具合が出た時にとか、改良開発する上ではすぐに対応して頂きたいということで部品調達とかは助けられております、地元企業様に。

大楽
何かあのSF小説のようなことを研究・開発しているような僕のイメージなんですけど、メルティンMMI さんが描く未来予想図というのは、僕たちにちょっと分かりやすく教えてもらってもよろしいでしょうか。

足立さん
そうですね、最終的にはサイボーグ技術の実現をめざしております。自分の手と同じサイズで自分の動きと一緒にするという。

大楽
これいつぐらいになりそうですか。

足立さん
もうあと10年……。時代の進化とともに合わせてかなきゃいけないので、すぐにスマートフォンが普及したのと同じようにどんどん進んでくと思います。

大楽
ぜひ一日も早くサイボーグってのを見てみたいね。

田巻
見たいですね。

大楽
頑張っていただきたいとおもいます。

足立さん
ありがとうございます。

大楽
お話をお伺いしたのは、株式会社メルティンMMIの、足立奈菜子さんでした。足立さん、ありがとうございました。

足立さん
ありがとうございました。

エンディング

先週は福島ロボットテストフィールド、今週は南相馬市産業創造センターにお邪魔しました。

2週にわたって南相馬市に来て生の声を伺いましたが、田巻さんいかがでしたか。

はい。実際にロボットテストフィールド南相馬市産業創造センターに訪れてみて、来る前まではロボットは感情のないイメージで冷たいような感じを持っていたんですけど、この南相馬で開発されたロボットを通して人と人との繋がりが作られて、それがまた未来の希望へとつながっているんだなって思いました。

いい勉強してますね。こうやって。

そうですね。

これからも僕たち二人で、福島ロボットテストフィールド、そして南相馬市産業創造センターにお邪魔して、現場のリアルタイムな情報をお届けしていきたいと思います。