【宇宙をもっと身近に!民間ロケット開発最前線】2022年3月19日放送分

田巻

今週フォーカスするのは…

民間ロケット開発の最先端に注目!

大楽

民間ロケットの開発というのは、この番組初めて取り上げますよね!

田巻

そうですね!ロケットって民間で開発できるんですね…!

大楽

そのあたりも聞いてみたいと思います!

宇宙関連では昨年、小惑星探査機「はやぶさ2」の製造に関わった福島の企業をご紹介しました。

大楽

今回は宇宙関連の中でも、世界的にその開発が注目されている民間ロケットの話題です。

福島にも関わりがあるということですので、お話楽しみですよね!

田巻

福島で一体何をしているんでしょうね!

大楽

聞きたいよね!

ゲストは、インターステラテクノロジズ株式会社 社長室室長 植松千春さんです。

植松さん、よろしくお願いします!

植松さん

よろしくお願いします!

インターステラテクノロジズ株式会社 社長室室長 植松千春さん

インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc. (istellartech.com)


ロボット製造から打ち上げまで!民間ロケット開発

大楽

植松さんの会社は、北海道広尾郡大樹町(たいきちょう)に本社を置く「インターステラテクノロジズ株式会社」。

まずは会社概要について伺っていきたいんですけど、事業内容っていうのを教えていただいてもよろしいですか?

植松さん

事業としては、まさにロケットを作って、打ち上げをして運用をする会社ですね。

作るだけじゃなくて、打ち上げるサービス自体も私どもで提供してるような会社になります。

大楽

これって最初何人ぐらいからはじめたんですか?

植松さん

最初はあのー…なんといいますかね、宇宙好きのおじさん達というか(笑)

私ども、インターステラテクノロジズっていう会社が出来上がる前に「なつのロケット団」という、いわゆる任意団体ですね。1970年代80年代当時って「2000年代になったらもう宇宙に人類はどんどん進出して、宇宙にどんどん暮らしていくんだ!」みたいな絵が描かれていたらしいんですけども…そんな世界が来てないぞと。

そのなかで、自分たちで宇宙船を作って、自分たちでどんどん外に出ていくんだっていうところで、SF 作家さんだったりとか、あとは JAXA のエンジニアさんを含めてロケットを自分たちで作ろうっていうのがだいたい2006年ぐらいからやっていて。ここから細々とロケットエンジンを作ったりとか、小さめのロケットを作ってというところだったんですけども。

いよいよ本格的なロケットを開発していくぞというところでこのインターステラテクノロジズという会社を2013年に立ち上げをしまして。そこからもうかれこれ10年弱ぐらい、開発を進めてきて現在に至るというところですね。

HISTORY | インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc. (istellartech.com)

大楽

細々とはいえ、色んなものを作ってくわけじゃないですか。それはそれですごく大変ですよね…!

植松さん

まさにうちの場合だと、基本的にまずは自分たちで作ろうというところから始まっていて。ロケットエンジンであったりとか、機体の構造部分であったりとか。あとは中にそのロケットを制御するための「アビオニクス」という、いわゆるフライトコンピューターなんかも自分たちで作ってやる会社になります。


ロケット「MOMO」と「ZERO」

田巻

どんなロケットを開発されているんですか?

植松さん

私ども、2機ロケットを作っているのと、研究開発をしているというところでして。

まず、既に打ちあがっているロケットが観測ロケット「MOMO」というロケットなんですけども。

サイズ感で言うと直径が50 cm、長さが10mちょっとですね。なので少し太めの電柱くらいだと思っていただければ。それぐらいのロケットをまず作っています。

©インターステラテクノロジズ

植松さん

これに関しては宇宙空間にタッチをして降りてくるというところで、いろんな観測用途だったりとか、あとは私どもで結構特筆してるところで言うと、そのロケットを使って何か面白いことをやろうみたいな…科学的なミッションとかいわゆるちゃんとしたことというよりかは、例えば「宇宙に飛んでいったハンバーグ」であったりとか、あとは企業の何周年イベントみたいな形で機体に企業の会社さんのロゴを貼ったりとか。そういうマーケティングみたいな形でも使っていただいたりするロケットを作っています。

大楽

CMみたいな感じですか?

植松さん

そうです!まさにCMとして使ってもらいたいなと。

大楽

CMとしてロケット!すごいな…!

観測ロケット MOMO | インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc. (istellartech.com)

植松さん

もう一つが、今まさに開発を進めている私どものメインのビジネスになってくるんですけども、小型人工衛星打ち上げ用ロケット「ZERO」というものを作っています。

©インターステラテクノロジズ

植松さん

サイズはもうちょっと大きくなって、直径が大体1.7mなので人間の背丈ぐらいですね。長さが24mぐらいのロケットになります。人工衛星を打ち上げるためのロケットになってまして、だいたいサイズでいうと100kgから150kgぐらいの衛星を宇宙空間に放出して人工衛星にするためのロケットになります。

©インターステラテクノロジズ

田巻

民間で人工衛星って打ちあげていいんですね…!

植松さん

打ち上げていいんです…!(笑)

田巻

知らなかった!

大楽

NASAとか、JAXAのみかなって思ってたんですけど。

植松さん

民間の宇宙開発ってものすごく進んできていて

有名なところで言うとアメリカの「スペースX」っていうイーロン・マスクがやってる会社さんであったりとか。今は「ブルーオリジン」っていう会社だったりとか。

結構、民間で宇宙開発を進めていくっていうのがいま急速に進んでいて、日本としてもそれの走りと言いますか、ロケットを作ってる会社さんも日本の中で数社あるというかたちですね。

大楽

日本でロケットって言うと、やっぱり堀江さん…ホリエモンさんが言ってたなと、SNS でよく発信されてたなというのが記憶にあるんですけど。そのあたりとはかかわりが…?

植松さん

まさに堀江は、一番初めではないんですけども、すごく早いタイミングで一緒に入ってやってた時のメンバーの一人ですね。

大楽

そうなんですか!

植松さん

今もうちの会社の取締役として入ってますけれども、まさに二人三脚でロケット開発っていうのを進めているような形ですね。

大楽

あの話を聞いた時正直、いやいや民間でロケットって…なんて思ったんですけど、形になるんですね…!

植松さん

なるんです!そうなんです!

大楽

夢ありますね!

©インターステラテクノロジズ

田巻

民間でやるメリットってあるんですか?

植松さん

やはり国の事業ですと、どうしても良いものを作らないといけないというか、新しい挑戦をしないといけない、技術として新しい挑戦をしないととか…どうしても保守的なロケットになってしまう所があるとは思うんですけども。

民間なので逆に言えば、失敗しようが基本的には自分たちの責任ですし、技術開発のスピードとして結構攻めた開発ができる。それによって安くて品質も良くて使いやすいロケットを作ってきたいという所がありまして、今僕らは民間単独でやらして頂いてるというところですね。

大楽

低価格っていうお話があったんですけど、ロケットって一機いくらぐらいなんですか?

植松さん

やはり国から打ち上げられてるものだと、もちろんサイズも違うので一概に比較はできないんですけれども、よくあるロケットですと数百億円のクラスのものが基本的にはやはり多いです。

大楽

数百億!

植松さん

僕らとしてはそれを、サイズが小さいロケットにはなりますけれども、数億円ぐらいで打ち上げができるようにしていきたいというところで。本当に一桁二桁コストとして下がったロケットを作っていきたいというところですね。

大楽

ちなみにロケット打ち上げの成功率ってどのぐらいなんですか?

植松さん

成功率は…自社のっていう形ですかね?

大楽

全体的だと…?

植松さん

全体で言うと、やっぱりロケットって時々失敗します。日本のロケットも2度ほど失敗しているところはありますけれども。

結構、極限状態と言いますか、ロケットエンジンの中で言えば大体3000℃ぐらいの炎にさらされてますし。逆に燃料部分で言えばー193℃とか、だいたいそれぐらいの温度とかにさらされますので。その温度差が入り混じっていったりとか、ものすごく冷たいところとはものすごく熱いところがあったりとか。本当に結構ハチャメチャな環境の中で、かつ正常に動かないといけないというところで。

そういう意味では、一つ一つ自体はシンプルなシステムなんですけど、それがたくさん組み合わさることによってどうしても複雑になってしまうところがあるので。その意味でやはり時々打ち上げ失敗というのもやっぱり聞くというところですね。

大楽

バランスが大切なんですね。

植松さん

そうなんです。全体のバランスがすごく大切で。

あとは、問題が起きた時に、ここが壊れてもここでなんとかカバーできるみたいな。「フェイルセーフ」って言うんですけども、失敗してもうまくカバーするといういろんなところでシステムを積み重ねていくことによって成功率の高いロケットが今たくさん出てきてるというところですね。 

フェイルセーフ英語: fail safe)とは、なんらかの装置・システムにおいて、誤操作・誤動作による障害が発生した場合、常に安全に制御すること。またはそうなるような設計手法で信頼性設計のひとつ。
フェイルセーフ – Wikipedia


インターステラテクノロジズと南相馬

大楽

ここからは福島との関わりについてお話を伺いたいと思うんですけど。

僕たちの目の前に基盤と、あとは30㎝ぐらいの白いものがあるんですけど…これって何なんですか?

植松さん

まさに福島で研究開発をしている部品の一部を今回持って来させていただきまして。

基盤で言うと、GPS の受信機ですね。

大楽

GPS!

植松さん

そうなんです。いま自分がどこにいて、どれぐらいのスピードで飛んでるかっていうのをこの基盤が実際にGPSの電波を受けて判断するための基盤ですね。これは試作基板なんでまだちょっと大きいんですけれども。

大楽

これがロケットに入って今どこにいるかどうか全部わかるということですよね。

田巻

不思議!こんな小さいものが受信できるんですもんね。

植松さん

皆さん持っているスマホもまさにGPSを受信して、いま自分たちがどこにいるかってことを、これよりもっとちっちゃい基盤でとってると思うので。

その辺を上手くロケット用で、普通のGPSだと制約があるので、自社で開発をしてやらせて頂いてるというところですね。

大楽

そしてもう一つ、白いものは…?

植松さん

これは3Dプリンターで試作したものなんで、実際には金属で作り直すものではあるんですけども。

これはロケットのエンジンからの力を受けて、かつ舵を切るためのジョイント部分ですね。

田巻

ジョイント部分?

植松さん

人間でいうと関節部分です。

大楽

バランスをとるということですかね。

植松さん

そうですね!実際にはこのパーツの下にエンジンがついて、かつ舵を切るためのアームみたいなものが別でついて。

ちょっと傾いた時には、じゃあ少し逆方向に舵を切れというふうにエンジンと逆方向にきってあげると、ロケットの姿勢がまた元に戻るみたいになってるんですね。

田巻

だから曲がってバランスがとれるようになってるんですね。

植松さん

そうですそうです!

二軸ですね、x軸とy軸というふうに言いますけれど、二軸で動くように設計されてるというところですね。

大楽

福島で作られてるということですけど、「南相馬市産業創造センター」の方に入居されていると。

南相馬市産業創造センター (mic-info.org)

植松さん

ちょうど昨年の12月から、産業創造センターさんに入居させていただいて。まさにそこの貸工場のスペースをお借りしてるんですけども、そこで研究開発をさせて頂いてます。

大楽

福島ではこういった基盤であったりとか、そういったものを作られてるんですか?

植松さん

それをメインにやらせて頂いてまして。

私ども、元々北海道と東京の方に支社があったんですけれども。量産を考えていくときに、やはり色んな基盤を作ったりとか、金属加工したりだとか、そういうことを試作からかつ量産までできるような工場さんがあるところを探していて。

浜通り地域のところで航空宇宙に強い業者さんがいくつかあるよという形でご紹介いただいていて。いろいろ訪問をさせていただく中で、ここだったら試作や研究開発という面でやりやすいなということで南相馬に事業所を作らせて頂いて、いま研究開発をやらして頂いてるというところですね。

大楽

先月には南相馬市と連携協定も結ばれたそうですよね?

具体的にどんな内容なんですか?

植松さん

市内の事業者さんと一緒にロケット開発をしていきましょうという話であったりとか。あとは人材教育というところで、例えば市内の小中学校とかに講演に行かせてもらったりとか、出前授業をさせてもらうみたいなところで。

航空宇宙産業と言いますか、宇宙産業がこれから広がっていく上で教育としてもこれから盛り上げていきたいというところで南相馬市さんと連携協定を結ばさせていただいたというところですね。

【令和4年2月9日】インターステラテクノロジズ株式会社との連携協定締結式/南相馬市公式ウェブサイト -Minamisoma City-

田巻

近くに福島ロボットテストフィールドもあると思うんですけど、そちらの方にも今後利用されたいですか?

福島ロボットテストフィールド (fipo.or.jp)

植松さん

まさに、福島ロボットテストフィールドでいろんな実証実験をやっていこうと思っていて。

大きなところで言うと「フェアリング」って呼ばれる部品なんですけども、ロケットの先端部分ですね。とんがり帽子の。あれは中に人工衛星を載せるんですけども、飛ぶ最中はしっかり衛星を守ってあげると。今度宇宙空間に行ったら邪魔になるので、これをパカッと開頭してロケットを飛ばすんですけど。それが実際に開くかどうか、フェアリングが開くかどうかを地上で試験をするんですけども、その試験をロボットテストフィールドでやろうかなと思ってます。

田巻

できるんですね、あそこで。

植松さん

できます…!

大楽

宇宙空間でそういうふうな動きができるかどうかっていうのを試す施設が福島にあるんですね。

植松さん

そうですね、特殊なことというよりかは、もちろん宇宙空間を模擬するってのは難しいんですよ、無重力だったり真空状態なので。

ある程度の制約はあるんですけども、地上でやっぱり一回動くことを確認しないと。やっぱり地上で動かないものって逆に言えば宇宙で動かないので。そのためにまずは地上でいろいろ試験をして。本当に最後の最後、ここはもう宇宙に行かないとわかんないねっていうところは宇宙で試験をするという形ですね。

地上でこんなに色々こねくり回しこねくり回しても、なかなかやっぱりわからないところがあるので。逆に言えば僕らにしてみれば、それはもう打ち上げてリスクを取りに行こうと、できるかどうかを取りに行こうというところで。

失敗してもいいっていうところが一つのテーマではあるんですけれども。実際にテストをして、これでうまくいかなかったから、次もう1回これ別のパターンでやろうってやればいいだけの話なんで、開発自体は。

大楽

失敗は大切ですよね…。

植松さん

失敗した時はヒヤヒヤするんですけどね…(笑)

田巻

それはそうなりますよね!(笑)

植松さん

あーー…やっちゃったぁー…と思いつつ、まぁ次何とかしよう!って感じですね!

大楽

すごいポジティブですね!

今週は、インターステラテクノロジズ株式会社 社長室室長 植松千春さんにお話伺ってきました。

ありがとうございました!!

編集後記

インターステラテクノロジズ:ロケット製造から打ち上げるサービス自体も提供する、北海道の民間企業。技術開発にスピード感があり、コストを抑え品質も良く使いやすいロケット製造が可能なのが民間ロケット開発のメリット。

インターステラテクノロジズが手掛ける二機のロケット。
観測ロケット「MOMO」:宇宙にタッチして降りてくるロケット。観測だけでなく、企業の周年記念やイメージアップ等のマーケティングにも活用できるロケット。
小型人工衛星打ち上げ用ロケット「ZERO」:100~150㎏の人工衛星を打ち上げるためのロケット。

南相馬市と連携協定を結んだインターステラテクノロジズ。GPS基板・部品の製造や、ロケットの実証実験を福島で行っていく。航空宇宙分野に強い浜通り地域の事業者とともに、ロケット製造やその量産、人材教育を進めることで福島からも航空宇宙産業を盛り上げる。

「リスクを負って失敗してもいい」をテーマに、次につながる研究開発を進めていると語るインターステラテクノロジズの植松さん。宇宙をもっと身近なものにしたいという植松さんのポジティブかつ快活な語り口に、宇宙へ気軽に行ける未来へのワクワク感がかきたてられました。

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