
大楽
田巻さん、この「バイオマスプラスチック」って知ってますか?

田巻
知らないです…!知ってました?

大楽
えーっと、知らないです…。

田巻
バイオマスというと、なんとなくとうもろこしのイメージとか思い浮かびますよね?

大楽
そうですね。あと、番組だと「バイオマス発電」というものを取り上げましたよね。
今日はじめて取り上げるバイオマスプラスチック、詳しく話を聞いていきたいと思います!
今回ご紹介する会社、株式会社バイオマスレジンホールディングスさんです。
代表取締役CEO 神谷雄仁(かみや・かずひと)さんにお越しいただきました。
神谷さん、よろしくお願いします!

神谷さん
よろしくお願いします。

バイオマスレジンホールディングス (biomass-resin.com)
バイオマスプラスチックとは?
大楽
神谷さんの会社、株式会社バイオマスレジンホールディングスさん。会社概要について伺っていきたいと思うんですが、改めてどんな事業をされてらっしゃるんですか?
神谷さん
私どもは、いまバイオマスのお話をいただきましたけども、これは持続可能な植物資源をプラスチックにしていくっていう会社なんですね。
大楽
植物をプラスチックにしていく…?
田巻
環境に優しそう…!
大楽
一般的にはどんなものに僕たち使ってたりするんですかね?
神谷さん
プラスチックって本当にたくさん身の回りのものに置き換わっているので、日常生活のコンビニさんとか行くと、ほとんど周りは全部プラスチックなので。あんなものに全部替わってくると思っていただければいいじゃないかなと思います。
田巻
数値で言うと、何%くらい替わりつつあるんですか?
神谷さん
まだそういう意味で言ったら少ないですけど、でもここ1、2年急激に広がっているので。
いろんなパッケージをよく見ると、いろんな小さな字でコメントが入ってますよね。そういうところに「バイオマスプラスチック」とか「環境に配慮した商品です」とか、いろんな記載があると思います。
大楽
ちょっと気にして見るようにしますね。
田巻
先ほど、バイオマスプラスチックって植物性のものをプラスチックに変えてるって言われたと思うんですけど、どんな植物をプラスチックに変えているんですか?
神谷さん
冒頭お話したとうもろこしなんかもそうですし、ブラジルではサトウキビとか。
日本では最初がスギとかヒノキとか、あとは竹とか。そういったものをプラスチックにしています。
大楽
木をプラスチックにするんですか?
神谷さん
その方が早いですね。
田巻
そうなんですか!?
大楽
どういう工程で木からプラスチックにするんですか?
神谷さん
これはちょっと難しいので、ちょっと聞いてる方も大変かもしれませんけれど…!
大楽
木をプラスチックにするって、僕は考えてもなかったので…。
神谷さん
多いですよ、本当に。
で、我々もいろんなことを知っていく中で、実は一番プラスチックにしやすかったのがお米なんですね。
田巻
お米なんですか!

お米でプラスチックを作る、その開発のきっかけ
大楽
会社の設立自体が2020年。
田巻
最近ですね!
大楽
その前というのは何をされていたんですか?
神谷さん
ホールディングの体制にしたのが2020年3月なんですよね。そのもう少し前、2017年、新潟県の南魚沼というところで最初の工場を設立していますので、5年ぐらい前かな、スタートは。
私自身はもう少し長くやっていまして、15年20年ぐらいこの分野の仕事に関わっているっていうところですね。
大楽
元々このバイオマスプラスチックを開発するきっかけって何だったんですか?
神谷さん
私、前職では食品系の原料商社におりまして。農水省とかそういったところでお仕事することがあって。
たまたまそのご縁があって、「お米のプラスチックっていう技術が実はあるんです」というのを聞いて、非常に興味をもって。ちょっと面白そうだなっていうのが最初のきっかけですかね。
で、ちょうど当時は「愛・地球博」っていう博覧会が名古屋であって。はじめて環境をテーマにするようなイベントが起きてたんですね。その時に本当に昔でいうところの生分解性のプラスチック、とうもろこしを使ったプラスチックとか、そういった優しい素材っていうのがはじめて日本にも広がり始めたタイミングでしたね。
生分解性プラスチック – 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア (nies.go.jp)
大楽
それが2005年ですかね?
田巻
そんな昔からなんですね。
神谷さん
ブームって波があるので、一時そういった環境に優しいものとか、あるいは起業ブームとかいろんなブームがあって。
最近ではそういう意味で言うと大きなうねりのなかに入ったような感じですね。
大楽
世界的にもSDGsで、持続可能なって話がありますもんね。
神谷さん
まさにそういう風な捉え方をして頂けていると思います。
大楽
今おっしゃったバイオマスプラスチックっていうのは、世界的にも他の国でもやってたりするんですか?
神谷さん
日本はね、実はちょっと遅れていまして。
大楽
日本が遅いんですか!?
神谷さん
はい、私の感覚でいうとちょっと遅いんですね。ヨーロッパはもっと進んでいて。次にアメリカ、アジアの中でもどうでしょう、中国とかバンコクとかでももうちょっと法制化しているので。
日本は比較的遅れてる方だなって印象です。
お米でつくるプラスチックの素「ライスレジン」
大楽
今、僕たちの目の前にあるこれがバイオマスプラスチックで開発されたものということなんですかね。目の前にお箸であったりとか…。
田巻
コップであったりとか。

大楽
いろいろとありますけど、これは商品名自体が…?
神谷さん
我々自身の会社は、その原料になる素となる「レジン」っていうプラスチックの原料を作ってるんですね。
大楽
レジンというのが…
神谷さん
プラスチックの素ですね。「ライスレジン」っていう名前で展開してるんですけど。そのプラスチックの原料を我々は製造していて。

通常、プラスチックを加工する人たちがいらっしゃるので、そういった人たちが袋を作ったりだとかボールペンを作ったりとかですね。日頃100%石油系の材料を使って加工してる人たちがおもちゃを作ったりとか、そんな風にして広がってますね。
田巻
先ほど触らせていただいたんですけど、すごい触り心地も良いですし、匂いなんかも、本当にお米の匂いがするんですよ。すごい体にもいいのかなって思っちゃいました!
神谷さん
他の材料と違うのは、触った瞬間とかちょっと香りを嗅いだ瞬間に、いままでのプラスチックと違いがわかるじゃないですか。実は普通のトウモロコシにしろサトウキビにしろ、作り方がほとんど普通のプラスチックと同じなので、触った感じとか見た感じがわからないんですよね。
でも我々の材料って全然その感じが違うので。優しい感じがするとか、なんかすごく自然な感じがするとか、プラスの印象がすごく多いかなと思います。
田巻
お子さんのおもちゃとか、おままごとセットがあったりとか。
神谷さん
これらはすごくお母さんたちに評判がいいんですけど、結局子どもたちって何でもかんでも舐めちゃうじゃないですか。どうしても安心安全なものを使いたいっていうニーズがあって、実はこれ10年以上前から販売されているんですが、累計で120万セット販売という相当な。
大楽
すごいですね…!
神谷さん
知ってる知ってるって、聴いてくださっている方の中にもたくさんいらっしゃるんじゃないかなと思います。

大楽
ライスレジンに使われる原材料となっているお米なんですけど、これは僕たちが普通に食べるお米と同じなんですか?
神谷さん
そこは説明がちょっと難しいんですけども、もともとは流通の段階で「ロス」って言われるような食に回らなくなってしまったようなお米があるんですね。それがもったいないなと思っていて、それを使いたいなっていうのがスタートだったんです。
大楽
元々ロスって呼ばれるお米って何に使われてたんですか?
神谷さん
例えば、昔は人間が食べなくなったものは餌にしたりとか、もう本当に昔は加工してのりにしたりとか、いろんなことをしてたんですけど。
結局、日本国内って700万トンぐらいの米が流通するんですけど、たった1%ぐらいでも数万トンになるので。そういうのって実はかなり多いんですね。うちは最初お話したように南魚沼でスタートしてますけど、日本で一番お米を流通する新潟県で、例えば誰もが知ってるようなお米のブランドのエリアでもやっぱそういうところがどうしても出てきてしまうので、それをうまく使いたいなっていうふうにして始めています。
田巻
その食品ロスからプラスチックを作ってるっていうことは、コスト的には結構安価というかあまりかからないんですか?
神谷さん
いろんな環境配慮型の材料ってのがあるんですけど、そういったものと比較すると実は我々かなりコストが安くて。本当にこういうレジ袋とかゴミ袋とかそんなに高いお値段のものじゃないところに普及が始まってるんですね。
大楽
環境に配慮したものって通常のものよりもちょっと高価っていうイメージがあったんですけど、そういうわけではないということなんですか?
神谷さん
比較対照ですね、今までの普通の100%の石油由来のものと比べると、多少割高にはなってしまいます。
でも今、日本だけでなく世界中でルールが変わっていて、今までと同じようなプラスチックではもうだめだよねっていうふうになっているので。多少お値段が高くなったとしても、やっぱり社会的意味があることをしていこうっていう方達が増えていて。
その中で比較対照していくと、我々の素材って国産なので。他の素材だと輸入してくるじゃないですか。そういうことも考えてくると、重油を燃やして運んできてCO2を発生させてとか、いろんなことを考えてくるんですよね。本当に正しい意味で CO2削減に貢献できる選択肢ってどうなのってなってくると、やっぱり国産のそういった素材を活用することに意味があるよねっていうふうに、いま段々と代わってきていると思います。

「バイオマスレジン福島」
大楽
ここからは福島との関わりについてお話伺っていきたいと思います。
昨年、「ライスレジン」の原料となるお米を福島で栽培されたそうですが、どちらで栽培されたんですか?
神谷さん
浪江町で栽培を始めました。
田巻
なぜ浪江町なんですか?
神谷さん
震災復興から、やっぱり農業の普及、もう一度水田を起こそうとかっていう取り組みがまだどうでしょう…1割にも満たないのかな…。そういったところに新しい展開をしたいなと思ってまして。
震災復興でもちろん福島をっていうのありますし、今年の秋ぐらい、実際にご縁があって我々は現地にプラスチックの製造工場を作ることになってるんですね。そのために今のこのバイオマスプラスチックを作る工場だけじゃなくて、その原料を作るお米もその地域で作れたらいいなっていうことではじめてます。
大楽
その会社が、「バイオマスレジン福島」という。
神谷さん
そうですね。「バイオマスレジン福島」という会社を昨年末に作ったと。今年の秋くらいには、工場として稼働が始まるかなと、そういったスケジュールです。
バイオマスレジン福島が始動しました | バイオマスレジンホールディングス (biomass-resin.com)
田巻
どういったプラスチックをつくるんですか?
神谷さん
新潟で作っているのと同じように、いろんなものに置き換えていける原料を作るので。作った原料は福島県内のプラスチックのメーカーさんとかで加工していただいて、ここにあるフォークとかスプーンとかいろんなものに置き換わってっていくんじゃないかなと思います。
大楽
そして、福島の雇用についてはどうなんでしょうか?
神谷さん
本当にありがたいことに、地域の人たちとのジョイントベンチャーでスタートもしてますし、我々の取り組みをいろんな方が知ってくださっていて。一緒にやらせていただきたいとか、福島の方以外でも日本中から我々と一緒にやりたいみたいなこと、あるいは福島で一緒に復興の支援をしたいとか。そんなことを言って志を持って参加してくれる人たちが増えていますね。
大楽
もし僕が将来的にものを作りたいという時に一緒に企画書とか提出すると、一緒にやっていただくことも可能なんですか?
神谷さん
実際にそういう話もしてますし、福島県内、例えば会津の方の漆器メーカーさんとかと共同で開発したりとか。
大楽
漆器ですか!?
神谷さん
プラスチックのスプーンとかあるじゃないですか。そういう人たちとものづくりを進めていったりとかですね、かなりいろんなことやってますよ。
大楽
じゃあこれから2022年、23年というのは大活躍しますね。
神谷さん
福島、アツくなるんじゃないでしょうか。
田巻
おおー!楽しみですね!
大楽
先月発表された、ふくしまベンチャーアワード2021。
これは福島県内において新しいビジネスへの挑戦や地域課題の解決に取り組むビジネスプランを広く募集したものなんですけど。これで最優秀賞を受賞されたということで。
神谷さん
ありがとうございます。
田巻
すごいですね…!周囲からのからの反応とかってどうでしたか?
神谷さん
地域の皆さんたちといろんなことを始めているので、もちろん我々も嬉しかったですけど、一緒にやっていただいている地元の人たちがすごく喜んでくれましたね。
大楽
やってる行為っていうのがこうやって認められたりすると、尚更テンションが上がってもっといいもの作ろうと思いますよね。
神谷さん
そうですね。あとは本当にチャレンジャーなので、農業もそうですし、プラスチックの分野ももちろんそうなんですが、今までやってきたことをさらに発展的にやっていこうとかより良いものを作ろうとかっていう思いでやっているので。そういう意欲の高い人たちが本当に参加してくださってるので、我々自身も本当に毎日刺激をいただけるような良い循環になってますね。
大楽
やはり農業ってすごく大切なものなので。そこから食べ物以外で、またあのエリアってやっぱり農業エリアがいっぱいあるじゃないですか。そこで農業だけじゃなくてプラスチックであったりという驚きもあるし、将来的にも自分がUターンで帰った時に取り組んで新しいものを作りたいなって気持ちもなると思うんですよね。
田巻
みんなに勇気を伝えてくれますよね。
神谷さん
実際にお米作りというのは、春とか秋に田植えをしたりとか稲刈りをする時って、本当はそのお祭りなんかと同じで、そういう時期に人が集まって楽しむような日本の原風景なんですよね。
でもそれは水田がなくなってきちゃうと人の集まりもなくなっちゃうし。そういうことをもう一度戻したいなと思っていて。純粋に、原料の米を作ってるっていうよりかは本当に水田を戻しておかないと。水田を一回やめちゃったら、すぐまた来年お米作ろうと思っても作れないんですよね。
本当に将来のことを考えて、食料の安全保障とかそういうことを実は考えていたりして。お米を作る量ってどんどん日本の国土中減っているので。やっぱいざとなった時とか、それはそれが地域のひとつのイベントになっていったりとか。そうやって街を作っていけたらいいなって思っています。
今週は、「株式会社バイオマスレジンホールディングス」
代表取締役CEO 神谷雄仁(かみや・かずひと)さんにお話を伺いました。
ありがとうございました!
編集後記
株式会社バイオマスレジンホールディングス:持続可能な植物資源をプラスチックにしていく会社。とうもろこしやサトウキビ、日本ではスギやヒノキなどの木をプラスチックに変え、身の回りにたくさんあふれているプラスチック製品からバイオマスプラスチックへと置き換えることを目指す。
中でも注目し、プラスチックに変えやすかったのがお米。お米からプラスチックの素となる「ライスレジン」を製造。ライスレジンを各企業が加工し、コップやスプーン、レジ袋、さらにおままごとセットなど、環境にも人にも優しい製品を世に出している。
バイオマスレジン福島:「ライスレジン」の原料となるお米を福島で栽培し、さらに福島で製造する工場を立ち上げる。ふくしまベンチャーアワード2021では最優秀賞を受賞。福島の雇用、農業、水田をさらに発展させるべく取り組みが進められている。
お米からプラスチックを生み出す…環境配慮型の材料と比較するとコストが抑えられている一方、従来の石油由来と比較するとどうしてもコストがかかります。それでも食品ロス削減やCO2削減に貢献し、社会的意味のあることに取り組む必要がある。世界的にはその潮流にあります。バイオマスプラスチック技術において遅れてしまっている日本を引っ張っていってほしいと感じました。
田巻
今回フォーカスするのは…
「脱炭素に貢献!環境にやさしい、お米のバイオマスプラスチックに注目」です!