【環境に優しい石炭火力発電と復興を浜通りから~勿来IGCCパワー~】2022年1月29日放送分

田巻

今回も勿来IGCCパワー合同会社 副所長 遠藤聰之(えんどう・としゆき)さんにお話伺っていきます!

大楽

前回は、日本が誇る最先端のエネルギーということで。

クリーンコール発電、そして勿来IGCCパワー合同会社についてお話お伺いしましたね!

田巻

そうですね!

大楽

今週は、遠藤さんのお人柄にも触れていきたいと思います。

遠藤さん、よろしくお願いいたします!

遠藤さん

勿来IGCCパワーの遠藤です。よろしくお願いします。

勿来IGCCパワー合同会社|福島から最先端クリーンコール技術の発信 (nakoso-igcc.co.jp)


遠藤さんの経歴と副所長のお仕事

大楽

遠藤さん、いま現在は勿来IGCCパワー合同会社の副所長ということですけど。

学生時代ってどんな勉強をされてたんですか?

遠藤さん

学部自体は法学部でした。

田巻

法学部⁉

遠藤さん

お堅い法律の勉強を進めていたと(笑)

大楽

今と全く違うことをされてたんですね…!

田巻

なぜいまこちらの業種に入られたんですか?

遠藤さん

ひとつは、電力業界っていろんな法律を扱うという面はあった訳ですよね。とても生活に密着している分、色々な法令に深く関わっているということと。

それからやっぱり、電力供給という面で社会に少しでも貢献していければ自分としては嬉しいなというところから、この業界を選んだと。

田巻

素敵ですね。

大楽

大学を卒業してからすぐ入られたんですか?

遠藤さん

はい。実は私、勿来IGCCパワーには東京電力から出向という形で来ております。

1989年に東京電力に入社しましたんで、もうかれこれ30年を過ぎちゃいましたね。あっという間でしたけど(笑)

大楽

勿来に来られたのも最近なんですか?

遠藤さん

勿来IGCCパワーに参りましたのが、2018年の7月からということになります。もう3年半、勿来に来て経ちましたね。

勿来IGCCパワー 遠藤さん

大楽

現在のお仕事についてお話を伺いたいんですけど。

現在肩書は副所長ということなんですけど、これはどのような業務をされてるんですか?

遠藤さん

副所長というのはですね、その他諸々なんでもやるという(笑)

大楽

そんなこと言わないで下さいよ!副所長ってそれなりの肩書なんですから!(笑)

田巻

何でもやるんですか?(笑)

遠藤さん

いま主に対応していますのが、色々な方が発電所にお見えになっていまして、こういった方々に発電所のご案内をするといったことですとか。発電所を運営していくにあたって地元の方々との良好な関係を作っていくところで、地元の方々へのご説明などを実施、対応しております。

大楽

遠藤さんが窓口みたいなかたちですか?

遠藤さん

そうですね。対外的な対応窓口を私がやっていると。

大楽

副所長がですか!

田巻

すごい…!

遠藤さん

勿来IGCC自体が、非常に人数の少ない会社ですので、色々と。

大楽

たとえば僕たちが施設見学に行きたいとなって行ったら、遠藤さんが…?

遠藤さん

私が喜んでご案内いたします(笑)

田巻

わー!行きたい!

遠藤さん

ぜひ来てください!

田巻

見学の詳細ってどこに書いてあるんですか?

遠藤さん

私どもの会社のホームページ、『勿来IGCC』と検索いただきましたらすぐヒットします。そこからご覧頂ければ。ホームページに電話番号が記載されておりますので、そこからお電話いただければと思います。

お問合せ | 勿来IGCCパワー合同会社 (nakoso-igcc.co.jp)

田巻

施設見学の反響とかって、どういった声がありますか?

遠藤さん

皆さんが観に来てまず驚くのは、石炭火力って聞いていたんでさぞかし石炭で汚れているんだろうなというふうに思ってる方達が多いんですが、石炭が全くない、道もきれい、粉ひとつ落ちてない…というところに驚かれます。これで本当に石炭使ってるんですか?と。

燃料となる石炭はすべて密封された中で外に全く出てこないので、石炭のかけらひとつない。もう外には石炭の粉が一切ないです。

田巻

イメージと違いますね。

大楽

施設見学に行く前から驚きましたね…!

遠藤さん

それから、設備の大きさにも驚かれます。ガス化炉自体が、高さ約67m

大楽

そんな高いんですか⁉

遠藤さん

ビル十数階分に匹敵する高さがあります。

田巻

一番注目して欲しいところは、やっぱり建物の大きさですか?

遠藤さん

はい、そのガス化炉ですね!石炭をガスに変えるというのが、我々の発電所の心臓部となりますので。


IGCCの未来とは?

大楽

遠藤さんが描く、勿来IGCCパワー合同会社の未来についてお話伺いたいんですけれども。

この「クリーンコール」。前回の放送では、二酸化炭素排出量を15%減らせるというお話でしたけれど、これってもっと減らすことは可能なんですか?

大楽

このクリーンコール発電をすることによって、二酸化炭素の量っていうのは以前より軽減されてるんでしょうか。

遠藤さん

はい、従来型の発電所ですと、100の電気を得るのに100の石炭が必要だったとしましょう。

我々の発電所では、100の電気を得るのに、85の石炭で対応することができます。石炭の使用量を15%削減している。石炭を使う分を少なくすれば少なくなる分だけ、大気中に放出される二酸化炭素の量は少なくなる。ゆえに従来型の石炭火力に比べて、我々の発電所は二酸化炭素の放出量が15%少ないということになるわけです。

田巻

すごいですね。燃料は少なくて、発電量は今までと変わらない…効率がいいですよね!

大楽

そうですよね。石炭へのコスト自体も下がってるということですもんね。

2022年1月22日放送分【最新鋭の石炭火力発電技術「クリーンコール」とは?】

遠藤さん

私どものIGCCプラント、広野と勿来のプラントですけれども、これらはいわば50万kW級の世界最新鋭のIGCCプラントで、IGCCプラントとしては第一世代にあたります。

我々のプラントでさらにこれ以上減らせるかと言うと、技術的にはもうこれ以上難しいレベルにまできているというふうに思っております。

我々、熱効率は48%まで高めているんですけれども、石炭火力発電所として48%の熱効率というのは、まさに世界最先端をいってるんですね。これから現状、さらに削れるかと言うと正直、技術的には熱効率を高めていくというのは非常に難しい。したがってこれから二酸化炭素を15%からさらに削るというのは至難の技というのが正直なところでございます。

ただ 、IGCC、クリーンコールの技術はさらに日進月歩で進んでいます。今後登場するであろう第2世代のIGCC。IGCCのガス化炉の中では石炭をガスにするだけではなくて、同時にこの中で水素ガスを生成しています。この水素ガスを使って、燃料電池で発電を行う。こういった研究も今進められています。そうなると、『IGCC+燃料電池』という組み合わせにすれば、今よりもさらに二酸化炭素の排出量を減らすことも実現できるんじゃないか、そんな風に考えております。

もう一つ、100の電気を使うのに85の石炭で間に合います、ということは、出てくる二酸化炭素の量が少ないんですね。これが何を意味するかというと、例えば二酸化炭素を海底や地層の中に貯留する、大気中に放出しないようにするといった技術を導入した場合…これを「カーボンキャプチャストレージ(CCS) 」というふうに呼んでおりますけれども、こういった観点との相性が良いプラントになるという。

二酸化炭素貯留 – Wikipedia

田巻

二酸化炭素を海中に?

遠藤さん

大気には出てこないようにですね。

田巻

そんなことできるんですか!

大楽

そうなった場合って、カーボンニュートラルとなるとどういうふうになるんですかね?

遠藤さん

もしそういった二酸化炭素を地中処分、あるいは深層海洋の中に処分するということになりますと、IGCC発電自体が炭酸ガスと二酸化炭素を出さない発電所、という位置づけになります。

大楽

なるほど…!

だからといって地中にいっぱい入れればいいっていう問題でもないんですよね?

遠藤さん

その通りですね。

やっぱり日本では地中処分って難しさがあって。海外では例えば、石油を掘った後の油井(ゆせい)の中に入れることをやってるわけですが、日本には油井がないですから、大量処分というところになる。

ただ、IGCC自体が二酸化炭素の量・ボリュームが普通の石炭火力よりも少ないですから、その分二酸化炭素を埋設処分するというところがやりやすい発電所であることは間違いないと。

環境省_二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS: Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage) (env.go.jp)

田巻

石炭を85%使って、50万kW作るのが今の最大の技術というお話でしたけど、50万kWって家庭的に見たら家庭何世帯分ぐらいのワット数なんですか?

遠藤さん

だいたい15万世帯のご家庭の電気をまかなうと。

勿来と広野を併せればだいたい30万世帯の電力を賄うことができると。

田巻

と考えると、15%削減するってやっぱりすごいことなんですね!


遠藤さんの描く勿来IGCCパワーの未来

大楽

勿来IGCCパワー合同会社の未来についてもお話を伺いしてもよろしいですか?

遠藤さん

広野IGCCも、勿来IGCCも、昨年2021年に発電を開始したばかりです。この50万kWは、世界でも初めてのIGCC発電所となります。

我々はこの発電所を今、とにかく安全に安定的に運転できる状態を保っていく。これがまず第一に大切なことなのかなというふうに考えております。

さらに安定的に運転できているということの実績を積み上げていけば、今後海外の方々の関心がより一層高まって、この日本で、浜通りで培ったIGCC技術が世界に展開できるように、我々は積み重ねていきたいなというふうに思っているところです。

大楽

そして、遠藤さん本人としては、未来にこういった世界を作りたいっていう展望はありますか?

遠藤さん

いま、多くの国々では、まだ満足に電気すらないという人達も沢山いらっしゃるわけですね。

持続的に成長できる社会、世界を作って行かなければいけませんけれども。やっぱりそのためには、すべての人々が電気に対してきちんとアクセスできる社会にしていかなければいけないです。

そのための電源をしっかり整備していくと同時に、地球環境問題…特に温暖化問題に対してしっかり手を打っていく。こういったことをうまくやりながら、人々が豊かな環境の中で育つ世界。こういったものを我々作っていきたいなというふうに考えております。

2週にわたって、勿来IGCCパワー合同会社 副所長 
遠藤聰之(えんどう・としゆき)さん
にお話伺っていきました。
ありがとうございました!

編集後記

●大学では法学部だった勿来IGCCパワー合同会社副所長の遠藤さん。生活に密着しているからこそ様々な法令に関わっていること、電力供給という面で社会貢献できることからこの業界に飛び込む。現在は勿来IGCCパワーでの対外的な窓口を担っている。

●IGCCプラントとしては第一世代にあたる勿来IGCCパワー発電プラント、その熱効率は48%と世界最先端。次世代で期待されるのは、生成される水素ガスを活用した『IGCC+燃料電池』という組み合わせや、二酸化炭素を海底や地層の中に貯留し大気中に放出しないようにする「カーボンキャプチャストレージ」技術の導入。

●2021年に運用を開始した勿来・広野IGCC。浜通りで培ったIGCC技術を世界に展開すべく、まずは安全かつ安定的な運転を保つことを目指す。電源をしっかり整備し、地球環境問題対して手を打つことで、持続的に成長できる世界を作る。

●収録中、当時エネルギーにより被災した福島に対しもっとできることがあったと悔やまれていた遠藤さん。だからこそエネルギーによる復興を目指すと真摯に語る姿が印象的でした。

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