

大楽
ここは略して「FREA(フレア)」と言います。
こちらの場所は、郡山駅から車で20分ほど北西の所に位置していまして、再生可能エネルギーの研究をする国の施設!
この福島県には様々なジャンルの最先端研究施設がありますが、この「FREA」は再生可能エネルギーに関しては、研究所の大きさも研究規模もトップクラスということなんですね!
2週にわたって、主に「風力」そして「地熱」について取り上げていきたいと思います!

田巻
今まで番組ではあまり深堀りできていなかった分野ですよね。楽しみです!

大楽
そしてSDGsの問題からも再生可能エネルギーのこれからについては高い意識を持っていきたいと思いますので、番組でもしっかり伝えていきたいと思います。
それでは早速お話を伺っていきましょう!
産総研:福島再生可能エネルギー研究所 (aist.go.jp)
FREAについて:「福島再生可能エネルギー研究所」所長 宗像鉄雄さん
大楽
さあ、こちらでお話を伺うのが、産総研「福島再生可能エネルギー研究所」所長 宗像鉄雄さんです。
宗像所長、よろしくお願いします!
宗像さん
よろしくお願いします!

田巻
早速ですが、具体的にここではどんな研究がされているんでしょうか?
宗像さん
2050年の「カーボンニュートラル」というのは世界的にも大きな目標で、これを実現するためには再生可能エネルギーの導入が大きく期待されています。
カーボンニュートラルとは - 脱炭素ポータル|環境省 (env.go.jp)
再生可能エネルギーには福島県では昔から只見川流域で水力発電が開発されておりましたけれども、その他に太陽光・風力・地熱・バイオマスなどが再生可能エネルギーとしてあります。
東北電力奥会津水力館「みお里 MIORI」【公式サイト】 (okuaizu-suiryokukan.jp)
この中で、太陽・風力・地熱・地中熱に関する研究…特に太陽光と風力では時間的な変動が大きいため、このような変動電源でも最大限有効に活用するためのエネルギーネットワーク技術や水素エネルギーキャリア技術を研究しています。特に実証の場として、大きな設備を研究用に運用しているところは国内では「FREA」以外にはないと思います。
「FREA」のミッションは、再エネの特徴に起因する課題を解決し、大量導入を加速することです。具体的には再生可能エネルギーに関する世界のイノベーションハブを目指すこと。
研究機関や企業・大学等との密接な連携によって独創的な再生可能エネルギー技術を福島県から発信する事。
また再エネ産業の集積、企業の発展や人材育成を通じて震災からの復興に貢献することです。
大楽
なるほど…すごい施設が福島県にあるということですね!

大楽
「FREA」ができたいきさつについてご説明いただけますか?
宗像さん
約10年前の2011年3月11日に、東日本大震災があり、福島県・宮城県・岩手県の三県が大きな被害を受けました。特に福島県は福島第一原子力発電所の電源喪失に伴う原発事故で、地震・津波以外にも多大な被害が発生しました。
この事故を受けまして、福島県は「再生可能エネルギー推進ビジョン」を改訂し、復興に向けた主要政策の一つに『再生可能エネルギーの飛躍的な推進による新たな社会づくり』を位置づけました。
福島県再生可能エネルギー推進ビジョン - 福島県ホームページ (fukushima.lg.jp)
それらを踏まえ、被災県の復興支援の目的で作成された、政府の東日本大震災からの復興基本方針により、2014年4月に産総研の新たな研究開発拠点として福島県郡山市に「FREA」が設立されました。
大楽
震災後ということなんですね。
宗像さん
そうですね。
福島県再生可能エネルギー推進ビジョン2021~持続可能な社会を目指して~ - 福島県ホームページ (fukushima.lg.jp)
田巻
福島だからできた研究の特徴について教えてください。
宗像さん
設立の経緯のところでもお話ししましたけれども、被災地の復興を目的に設立されました。
具体的には、復興庁の予算をいただきながら「シーズ支援事業」というものを行っております。
事業内容|産総研:シーズ支援プログラム (aist.go.jp)
ここでは、当初被災三県に所在する企業が有している「シーズ」、再エネとは直接には関係しない技術ですけれども、これをお預かりして再エネの分野で適用できる技術として「FREA」が評価するという制度です。
シーズ…企業保有の再生可能エネルギーに関連した技術やノウハウ
この制度を利用してお預かりしたテーマは、これまでに150件程度になりますけれども、このうち50件程度は製品化されています。これらの支援を通じて被災地の再エネに関する企業の集積をお手伝いすることをしています。
今年度からは、対象地域が被災三県から福島県浜通り地区に所在する企業に限定されましたが、引き続き支援を続けていくというところです。
田巻
国の施設ということで、民間ではできない研究とかがいっぱいできるんですか?
宗像さん
そうですね。やはり民間ではなかなか難しいような、特に大型化というところでは民間ではすぐにするというのが難しいので。国の施設として、民間の方にこちらの施設を利用していただいて、そして開発していってもらうということをしております。
田巻
なるほど…このFREAの建物自体がすごい広いですよね。
宗像さん
この実証フィールドでは500kw の太陽電池であるとか、300 kw の風車であるとか、そういった大きな施設というのを同時に扱いながら実際に開発もできるといった環境は他にはないと。
大楽
そして、こちらの検証施設が開設されてから今年で8年目ということなんですけど、これまでの研究成果などがありましたらご紹介いただいてもよろしいですか?
宗像さん
再エネは、やはり地域ごとに特性が異なります。
福島県に限定しますと、柳津西山地熱発電所が1995年から運転開始していますけれども、当初は65000 kw の出力でした。それが2017年では、30000kwに軌道修正しております。これは次第に中の貯留槽から出てくる蒸気が減ってくるというような状況もございますので、今これに関連して、我々「FREA」の方でも地熱関係・貯留槽関係の探査をしていて。地熱発電所の貯留槽の中に亀裂があるんですけども、その亀裂の状況を把握して、うまくもう一度再生するといったような技術開発も行なってございます。
発電所・PR館のご案内|柳津西山地熱発電所 PR館|東北電力 (tohoku-epco.co.jp)
大楽
そういった技術開発もできるんですか⁉
宗像さん
地下の監査ということですね。
そのほか、やっぱり風車ということで、福島では洋上風車はかなり大型のものを作ってましたけれども。それらも踏まえて風車関係も「ライダー」という風況を観測する設備がございますので、その設備を利用して、今までは実際にポールを立てて風景を観測しないといけなかったものを、ライダーを使って風況を観測するといった開発も行っております。

大楽
施設内のメインエントランスの方にFREAプラザというのがありましたけど、そこの展示物も凄いですよね!
宗像さん
こちらはシーズ支援事業で我々が開発した技術の一部を展示しております。

大楽
普段一般の方が来て見学とかしても大丈夫なんですか?
宗像さん
はい、大丈夫です。ただ現在はコロナ禍の影響で、すぐに来て見られるという状況ではないんですけれども、早くコロナ禍の影響がなくなりましたらそういうふうにしたいというふうに考えてございます。
福島再生可能エネルギー研究所:見学申込みフォーム (aist.go.jp)
大楽
もし来られる方は事前にご連絡をということですね。
バーチャルツアー【シンプルモード】 産総研:福島再生可能エネルギー研究所 (aist.go.jp)
というわけで、産総研「福島再生可能エネルギー研究所」宗像所長にお話を伺いました。
ありがとうございました!

風力発電の最先端研究
大楽
続いては「風力」の最先端研究の施設にやってきました。
ここでお話を伺うのは「風力研究チーム長」小垣さんです。よろしくお願いします!
小垣さん
よろしくお願いします。

田巻
ここは風力発電のエネルギー管理棟になります。ここではどういった研究をされていますか?
小垣さん
こちらでは、いくつかの新しいデバイスを使って風車の性能を改善する研究を行っております。
具体的には、風車のタワーの一番上に箱状のものがありまして、「ナセル」という所なんですけど、その上面前方に「ライダー」という装置を設置しておりまして。そこからレーザーを照射して、通常は分からない風車上流側の風の情報をリアルタイムに計測して、その情報をもとに風車の制御をすることで性能改善するという研究・実証をしております。
大楽
そしてその風車のデバイスを作られてるということですか?
小垣さん
そうですね、風車に追加で設置して、風車の性能を改善するデバイスを開発・実証しているというところです。

大楽
これは、改善するというとどういうものがあるんでしょうか?
小垣さん
先ほど紹介した「ライダー」という装置は、通常分からない風車の前方側の情報を測ることで、リアルタイムに制御をするということで、数%ですけれども風車の性能や発電の効率を上げることができるといったところ。
あるいは事前にちょっと強い突風が来るという情報がわかれば、あえて風を逃すような翼の形に制御をするということで、風車にかかる力を弱めてあげて寿命や信頼性を改善するという、そういったことに使える技術になります。
大楽
先ほど『レーザー』ってありましたけれど、レーザーを使って前からくるものを察知するっていうのは、車とかでも搭載されそうな技術ですね。
小垣さん
実はライダーという技術は今の車の業界でも非常に着目されていて。
ちょっと高級車になるかと思いますけども、高級な車では障害物との距離、前方の車との距離を測るためのデバイスとして使われつつあると。同じそのライダーの技術を、風力発電の分野では前方の風速を計測するための技術として活用し始めているという状況になります。
田巻
なるほど…!確かに最近車ってぶつかりそうになるとピッピッピッって教えてくれたりすると思うんですけど、その技術ということですね!
小垣さん
自動運転につながるような、使われつつある技術が風車に応用されつつあるといったところです。
大楽
それが目の前の対向物ではなく「風」ということなんですね。

産総研:再生可能エネルギー研究センター 風力エネルギーチーム (aist.go.jp)
大楽
この「FREA」では、風力発電以外にどんな研究をされているんでしょうか。
小垣さん
「FREA」では、こちらの実証フィールドではございませんが、国内では洋上風力発電の開発が非常に見込まれているという中、陸から洋上の風を測るための計測技術、これも同じく「ライダー」という装置を使って、もっと強力な強度をもったレーザー光を照射するライダーで陸上から数キロ先の洋上の風況を測る研究開発をしております。
大楽
洋上にある風力発電のプロペラの部分やそこの部分も変わったりすると…?
小垣さん
これはですね、洋上風力発電を建設する前に、そこにどれぐらいの風が年間通して吹くかという調査の目的のために、設置前にですね。
田巻
なるほど!どこか一番最適かを探すということですか。
小垣さん
洋上風力発電事業は、非常に大きな風車を大量に設置しないと事業が成り立たないんですけど。数百億円から数千年億円の発電所を建設すると、場所が悪くて思ったような発電がしなかったとなると非常に問題ですから。ここに洋上風車を建てるとどれぐらいの発電量が得られるかという、事前の高精度なアセスメントが非常に重要でして。そのための技術になります。
田巻
地上にある風力発電と、水上の上にある洋上風力発電、これからはどちらが増えていくんですか?
小垣さん
日本にとっては、将来的には洋上の風力発電がもっと増えていくという状況かと思います。

大楽
風力発電で用いられる機械って、どれくらいもつんですか?
小垣さん
大体20年くらいというイメージで。
大楽
途中途中でメンテナンスとかが必要なんですか?
小垣さん
風力発電のメリットでありデメリットでもあるのは、機械ですので定期的な点検をしないと壊れてしまったりということもありますので、手がかかるものではあります。ただコストが安いので、雇用を確保するという意味では、地元の方にそういった点検をしてもらって、その地元にも還元しながらクリーンなエネルギーを作るというのが非常にメリットの一つになるかと思います。
大楽
それ以外で風力発電のメリットってありますか?
小垣さん
基本的に風力発電は、再生可能エネルギーの中でもコストが一番安い、世界的には一番導入が進んでいる発電技術になりますので。技術的には非常に成熟していると。安定に運用できるというところになるかと思います。
田巻
最後に、風力発電の未来、そしてさらなる可能性について教えてください!
小垣さん
私は別途で、日本風力エネルギー学会の理事を務めさせていただいているんですけども。その学会の中では、若手のメンバーが少ない…あるいは活躍がちょっと少ないといった課題があります。
ただし、風力発電には皆さんから誤解があって、もう風車は技術的には完成された技術で前近代的なものだというようなイメージを持たれる方も実はいらっしゃるんですけども。風力発電は、国際的な権威ある機関の予測によると、2050年までまだまだ右肩上がりで導入が進むということになっておりますので。若手の皆様がまだまだ活躍できる場でありますので、是非若手の方々にご活躍いただきたいという想いであります。
大楽
小垣さんの、再生可能エネルギーには風力もあるんだぞという想いですね。色々と学べましたね。
田巻
再生可能エネルギーだけでも選択肢が広がりますよね!とても面白かったです!
お話を伺いしたのが風力研究チーム長 小垣さんでした。ありがとうございました!

次回も「福島再生可能エネルギー研究所」の取材の模様をお伝えします。
編集後記
●2014年、福島県郡山市に設立された産総研(産業技術総合研究所)の「福島再生可能エネルギー研究所」、略して「FREA」(フレア)。「FREA」のミッションは、再エネの特徴に起因する課題を解決し、大量導入を加速すること。独創的な再生可能エネルギー技術を福島県から発信し、再エネ産業の集積、企業の発展や人材育成を通じて震災からの復興に貢献することを目指す。
●時間的な変動の大きい太陽光発電や風力発電を、最大限有効活用できるよう日々研究開発が進められている。民間では取り組むことが難しい「大型化」設備を特徴としている。
●風力発電:再生可能エネルギーの中でもコストが一番安く、世界的には一番導入が進んでいる発電技術。「FREA」では、陸から洋上の風を測るための計測技術を駆使し、洋上での風力発電を最大限活用できる環境を研究している。
●陸から洋上の風況を計測する技術と、最近の自動車に搭載されている障害物や前方の車との距離を測るためのデバイス技術が共通していることに驚きました。風力発電の新たな可能性について沢山学ぶことのできた取材回となりました。
(HP担当)
田巻
2022年最初の取材は、福島県郡山市にあります産総研(産業技術総合研究所)の「福島再生可能エネルギー研究所」にやってきました!