
大楽
今回は、航空宇宙部門にご出展の企業/団体についてご紹介していきます。
番組では初の宇宙の分野ということで!

田巻
おぉー!!
ロボット・航空宇宙フェスタふくしま2021 航空宇宙部門
大楽
まずはこのイベントについて、福島県次世代産業課 主事 江口友香さんにお話を伺っていきます。
江口さん、よろしくお願いします!
江口さん
よろしくお願いします!

ロボット・航空宇宙フェスタふくしま2021 (robotfesta-fukushima.jp)
大楽
江口さん、今回は航空宇宙部門ということなんですけど、出展数はどのくらいなんでしょうか?
江口さん
福島県内外含めまして、40の企業/団体の方にご出展いただいております。
大楽
福島県内からの地元の人たちの反応ですとか、出展者さんからの反応はいかがですか?
江口さん
そうですね、いまコロナ禍の中でリアル開催っていうのがとても非常に少なくてですね。
今回はリアル開催が出来まして、非常にご好評をいただいております。
また、企業の皆様の商談の場の機会も少なくなっておりますので、こちらのフェスタを通して、商談の取引拡大に進んでいますというお声をいただいております。
田巻
江口さんは、航空宇宙部門のご担当ということですが、今回福島県内ではどのような企業/団体が出展されていますか?
江口さん
福島県内で、小惑星探査機「はやぶさ2」の製造に関わった企業が8社ありまして。
そちらで関わって頂いた企業の方が出展いただいております。
大楽 田巻
8社!
大楽
すごい数ですね。
田巻
8社中何社が出展されているんですか?
江口さん
今回は3社の方にご出展いただいております。
田巻
気になりますね!
大楽
はやぶさといい…宇宙といえば男の子の夢ですからね。
田巻
福島県の企業が関わっているなんて初耳ですよ、すごいですね!
大楽
ぜひこの後、製造に関わった企業さんに取材していきたいと思います。
そして、江口さんはこの福島の航空宇宙産業の分野において、将来的にどのような発展を期待されてますか?
江口さん
航空宇宙分野産業は今後さらに成長していく分野と考えております。
福島県では補助金ですとか、取引拡大の機会がある今回のようなフェスタの開催を通して、航空宇宙分野をさらに盛り上げていきたいと思っています。
また今回のフェスタは若い世代から航空宇宙分野に進出する人材が生まれると、大変嬉しく思います。
大楽
お話お伺いしたのは福島県次世代産業課 主事の江口さんでした。ありがとうございました!
「はやぶさ2」衝突装置 インパクター:日本工機株式会社
田巻
航空宇宙関連のブースに来ています!
大楽
お話を伺うのが、日本工機株式会社 伊藤さんです。よろしくお願いします!
伊藤さん
よろしくお願いします!
[日本工機株式会社] (nippon-koki.co.jp)
田巻
早速ですが…こちらはどういった事業をされている会社ですか?
伊藤さん
日本工機は東京都港区に本社を置きまして、福島県の西白河郡西郷村に工場がある会社です。
当社の主な業務内容は、防衛用装備品…自衛隊さんの装備を作る会社なんです。
それ以外にも産業用爆薬と言って、トンネルを掘ったり工事をしたりするための爆薬を作っているような会社です。その他に防犯機器ですとか防災機器も作っています。
大楽
そして…目の前にはこの直径30cmほどの円錐の金属が展示されてるんですよね。

田巻
これは一体何ですか…⁉
伊藤さん
こちらは「はやぶさ2」の衝突装置『インパクター』と呼ばれるものでして。
「はやぶさ2」の任務としましては、小惑星リュウグウから小惑星表面あるいは内部の砂などのサンプルを取るために、爆発の力を利用しまして、銅の塊を小惑星にぶつけて大きなクレーターを作って、「はやぶさ2」がそこから砂などを取ってくるといったものになっております。
大楽
日本工機さんの方では、それ自体を全部作ってるんですか?
伊藤さん
当社はこちらの「はやぶさ2」インパクターの構造の設計と、爆薬の製造または充填をしています。
大楽
これはJAXAからの依頼があってからなんですか?
伊藤さん
JAXA 様から、震災前くらいですかね、ご依頼いただきまして。国内では爆薬・火薬を使って何かを設計する技術がある会社が数社ぐらいしかないものですから、当社にお声がかかりまして。
そこから開発を始めまして、2014年ごろの打ち上げまでずっと設計開発を続けておりました。
大楽
これって日本工機さんだけじゃなくて、やはりいろんな企業さんとのコラボレーションといった形なんですかね?
伊藤さん
そうです。主に福島県内の企業様としまして、タマテック様という会社さんと、東成イービー東北様という会社で共同でものづくりをしておりました。
タマテック様はインパクターの金属の加工ですね。非常に高精度の金属加工を要求されるんですがそちらをやっていただきました。
またインパクターは銅とステンレスでできているんですけども、これを宇宙空間でも使えるように緻密に溶接する必要があったんですが、それを行っていただいたのが東成イービー東北様というところになります。
田巻
「はやぶさ2」の任務って我々も見てたじゃないですか。その裏側には福島県の企業が関わっていたなんて知らなかったですね…!
ここまでは、日本工機株式会社の伊藤さんにお話を伺いました。
伊藤さん、ありがとうございました!

インパクターの金属加工 : 株式会社タマテック
大楽
続いてお話を伺うのが、株式会社タマテック 箭内さんです。よろしくお願いします!
箭内さん
よろしくお願いします!

田巻
先ほど日本工機株式会社さんで、「はやぶさ2」のことを聞いてきました!
日本工機株式会社さんからどんな相談をされたんでしょうか?
箭内さん
「はやぶさ2」のプロジェクトに関して、ステンレスの薄肉加工ができないかということで相談を受けまして。
100㎏のステンレスから3㎏ 削って、厚みが1 mm、精度が,5(コンマ5)精度を出す…という相談を受けました。
大楽
9割以上ってことですよね…?100㎏のものを3㎏ですもんね?
箭内さん
はい。そうなんです。
大楽
そもそも株式会社タマテックさんはどういうことをされてる会社なんですか?
箭内さん
私たちは岩瀬郡鏡石町というところで航空宇宙部品・医療機器の精密切削加工をやっているものづくりの会社です。
精密部品加工 | 株式会社タマテック |福島県 (tamatec.net)
大楽
日本工機株式会社さんからそういった設計されたものを、こういうふうに作ってくれって発注があって…最初からすぐ作れたものなんですか?
箭内さん
いや…悩みました…!
ちょっとうちの副社長の方も相談を受けまして、色々と苦労した点があったみたいです。

田巻
こちら、「はやぶさ2」の任務成功は地元では反響がありましたか?
箭内さん
そうですね、地元の新聞会社や町長さんからも役所に呼んでいただきまして表彰もありました。
大楽
そうするとやはり世間的な注目も高まったと思うんですけど、そこから例えば就職したいとかこういうのに興味があるんですっていう若い人とかっていましたか?
箭内さん
そうですね、高校生からも募集が増えましたし。
お付き合いあるメーカーさんからもすぐに連絡頂いて、すごいことやられてますねって事で多少受注に結びついたかなと思います。
大楽
やっぱりなによりもそういった周りの声って嬉しいですよね!
田巻
最後に株式会社タマテックのこれからの夢、福島と共に歩む未来について教えてください!
箭内さん
地元の企業と協力して、新しい分野に携わって、これからの日本の発展につなげていければなと思います。
田巻
これからも応援しています!
お話お伺いしたのが、株式会社タマテック 箭内さんでした。ありがとうございました!

インパクター ケースの溶接 : 東成イービー東北株式会社
大楽
続いてお話を伺うのは、東成イービー東北株式会社の水野さんです。よろしくお願いします!
水野さん
よろしくお願いします!
大楽
日本工機株式会社さん、そして株式会社タマテックさんにお話を聞いてきましたが、共同で開発された「はやぶさ2」の衝突装置、こちら日本工機株式会社さんからどんな相談があったんですか?
水野さん
私どもは電子ビーム溶接をメインにやってる会社になりまして。
東成イービー東北株式会社|電子ビーム溶接・レーザ加工・レーザクリーニング (ebtohoku.co.jp)
今回、「はやぶさ2」のインパクター…ケースの溶接の依頼を受けました。蓋が銅で、ケースがステンレスという異種金属同士の溶接になりまして。
異種金属溶接ができるのは電子ビーム溶接技術…弊社の方に声がかかったというような経緯になります。
田巻
いま電子ビームという単語を初めて聞いて…電子ビームってなんなんですか?
水野さん
一般的にレーザー溶接というのは、産業分野でもメジャーになっていまして。
レーザーですと光を使った溶接なんですが、電子ビーム溶接は電子を使って溶接をするという技術になります。
大楽
それはやはり金属同士が全く違う物質のもので、くっつきにくいということがある観点からの溶接方法なんでしょうか。
水野さん
ほかの溶接技術では異種金属同士の溶接ができなくてですね、電子ビーム溶接では局所的にかなり高エネルギーのビームを当てて…厳密にいうと融点が違うんですが、その融点が違う金属をもう一瞬に両方溶かしてくっつけるような技術になります。

大楽
そして共同開発された「はやぶさ2」の衝突装置ということでしたけど、開発秘話などがあれば教えていただいてもよろしいですか?
水野さん
そうですね、かなり難しい案件でした。
その溶接も、ケース円周上にぐるっと溶接してくっつけてるんですけれども、一部でもその溶接が弱いところができてしまうと、飛ばすときにそこからはがれて吹き飛んでいくというところで、狙ったところに飛ばないんですね。
なので、一周均一に溶接するというところが実は難しい技術です。すごく時間を要しました。 半年、一年くらいはもうずっとつきっきりで試作をやっていました。
田巻
最後に東成イービー東北株式会社さんのこれからの夢について、そして福島と共に歩む未来について教えてください!
水野さん
特殊な技術を得意としているというところで、新しいものの開発など、そういったところに注力していって、技術開発につながればというところでやっております。
大楽
これからも地元の方々とをタッグを組んで、ぜひ頑張っていただきたいと思います!
お話を伺いしたのは東成イービー東北株式会社の水野さんでした。ありがとうございました!

「はやぶさ2」にコンピューター理工学の観点から:会津大学宇宙情報科学研究センター
田巻
航空宇宙部門のブースにお話を伺っています。まだまだ気になるブースがありますね!
こちらは…会津大学宇宙情報科学研究センターですね!
大楽
お話をお伺いするのは、会津大学宇宙情報科学研究センターの出村教授です。よろしくお願いします!
出村教授
よろしくお願いします。

大楽
この会津大学宇宙情報科学研究センターですが、どのような研究をされてるんですか?
出村教授
幅広く深宇宙探査および地球観測衛星のデータ解析とかをやってるんですが、最近でしたら「はやぶさ2」に全ての観測機器に横断的にコンピューター理工学の観点で参加してるのが大きいです。
宇宙情報科学研究センター(ARC-Space) | 会津大学 - University of Aizu (u-aizu.ac.jp)
大楽
この「はやぶさ2」では具体的に何を行ったんでしょうか?
出村教授
基本的にはデータを作ることと、ソフトウェアの開発ということと、解析ということで3点をやっていまして。
一番大きいのは3次元の形状の地図を作る。これで着陸地点を決めるということをやりました。
それから水を含む鉱物がどういう分布をしてるかを近赤外分光計というもので調べたり、熱カメラを使ってどこが砂なのか岩なのかを決めたり、着陸機…ローバーの開発に参加して、降りて実際で写真を撮ったり…色々やりました。
はやぶさ2と会津大学まとめ | 会津大学 - University of Aizu (u-aizu.ac.jp)
大楽
ひとつ聞きたいのが、この小惑星をなぜ研究するんですか?
出村教授
大きく分けると二つあると。
一つは私たち生命や海っていうものが地球上にあるんですけど、これ最近わかってきたんですが…地球が生まれた時にこれは存在しないということが分かってきました。いま私たちがここにいるということは、この材料物質はどこからか持ち込まれたことになります。我々の素材はどこから来たのかというものを地球の外へ行って調べなきゃいけない。
もう一つはプラネタリーディフェンスっていうもので、惑星防衛っていうんですかね。小惑星が地球に降ってくると陸に落ちたら町が消えるし、一応防災という観点から言うとなんとか対策をしなきゃいけない訳です。
この小惑星を色々調べると、中身がどれくらいの強度であるか、ひっぱたくとどれぐらい動き得るかなどを調べることで対策が打てるようになります。そのための材料として我々はいろいろな研究をしています。
大楽
その小惑星が地球に降ってくるってことは、可能性があるんですか?
出村教授
大いにあり得ます。
大楽
そうなんですか⁉
出村教授
もう『リュウグウ』も近地球小惑星と言っていて、地球に衝突するリスクはあります。
田巻
衝突するってわかった時に、どのように防ぐことができるんですか?
出村教授
アメリカとヨーロッパとJAXAが協力しているんですけど、探査機を高速でぶつけて軌道を変えよう、そういう実験をしようとしていて。この11月に『DART』という探査機がアメリカから打ち上げられます。
小惑星を狙い撃つ探査機「ダート」、打ち上げ成功 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)
大楽
それは「はやぶさ2」の次の…?
出村教授
日本のミッションではないので、直接の続きではないんですが、「はやぶさ2」で活躍した会津大のメンバーもお声がかかって参加することになったと。

田巻
最後に、宇宙開発をする場所として、福島の魅力を教えてください!
出村教授
福島県にはいくつか宇宙に理解のある企業さんだとか、大学さんがあるのでそこでもいろいろとできると思ってます。
特に今回の出展はロボットと宇宙ですよね。今は月面にロボットを送り込んで何かいろんな開発しようという流れがこれから強化されますので。まさにロボットと宇宙のコラボレーションをする場がこれから増えてくるので。
福島は両方持ってるんだから、非常に最適な場所のひとつだと思います。
田巻
未来が楽しみになってきましたね!
会津大学宇宙情報科学研究センターの出村教授でした。ありがとうございました!
編集後記
●福島県内で、小惑星探査機「はやぶさ2」の製造に関わった企業は8社。ますます発展していく航空宇宙産業において、若者世代の進出を目指すべく、フェスタを通して盛り上げていく。
●福島の企業が「はやぶさ2」のミッション成功を支えていた。小惑星「リュウグウ」サンプル採取衝突装置「インパクター」は、日本工機・タマテック・東成イービー東北の技術が結集し開発された。
●小惑星研究の目的…①地球上の生命・海のルーツを地球外から探る。 ②惑星防衛:衝突リスクのある小惑星から地球を守る。会津大学宇宙情報科学研究センターがコンピューター理工学の観点から参加。
●まだまだ知らないことだらけだからこそ、今後成長していく航空宇宙産業。地元に根付いた企業の技術が、宇宙の謎を解明していくところに夢があります。冬の澄み切った星空を眺めながら、宇宙探査技術に思いを馳せます。
(HP担当)
田巻
今回も、福島県郡山市の「ビックパレットふくしま」で11月19日・20日に開催の「ロボット・航空宇宙フェスタふくしま2021」、こちらの模様をお届けします!
前回はロボット部門に出展の企業/団体をご紹介しました。