今回のゲスト:株式会社エヌビーエス 常務取締役 松田俊明さん

大楽
なるほど。

田巻
壁が一面のガラスという建物も結構ありますし、しかもオシャレですよね!
こうやっって考えてみると、私達の身の回りはガラスが溢れていたんだなって思いました。

大楽
いやもうそれ以外にもやっぱりスマートフォンとかパソコン、テレビのディスプレイ部分とかね。
本当に身近すぎる素材なので、こういう機会がないとなかなか意識しないですよね。
というわけで今回はその「ガラス」についてお話を伺っていきたいと思います!
今回のゲストは、本社が東京都台東区。来年1月、楢葉町に日本最大級のガラス加工工場を稼働させる 株式会社 エヌビーエス 常務取締役 松田俊明さんです。

松田さん
よろしくお願いします。
機能ガラス とは?
大楽
早速ですが、まずは株式会社 エヌビーエス さんについて伺っていきたいと思います。
会社の設立っていつぐらいになるんですか?
松田さん
設立は富山県で1987年5月に設立されまして、今年で34年になります。
大楽
歴史がありますね!
田巻
長い!
大楽
エヌビーエスさんのホームページを見たら、「 機能ガラス ・素材応用製品の提供を行う総合ガラス加工メーカー」というふうに書いてあったんですけど、この「機能ガラス」ってなかなか聞くことがないよね?
株式会社エヌビーエス(NBS)東日本工場紹介/採用情報 (nbstk.co.jp)
田巻
聞いたことなかったです…!
大楽
これどういった特徴があるんですか?
松田さん
「機能ガラス」には大きく分けると三つの商品がございまして。
ひとつは『強化ガラス』。割れると粉々になる商品です。
使われてるところで言うと、先程お話にもありましたガラスのテーブルですとか、あとは学校の窓ガラスですとか、そういうところに強化ガラスっていう商品が使われてます。

それともうひとつが『合わせガラス』です。
合わせガラスは一番身近なところで言うと、皆さんが乗ってらっしゃる車のフロントガラスですね。
大楽
あれは合わせガラスなんですか。
松田さん
そうなんです。そこに挟んであるプラスチック素材が衝撃を吸収するという機能がありまして、そこでいう『安全ガラス』ですね。
割れても飛散しにくい、貫通しにくい。
あとはよく使われてるところで言うと防災。例えば竜巻とか台風とか、飛来物があってもガラス窓・ガラスが割れない、貫通しないっていうところで安全ガラスと言われてます。それが合わせガラスの特徴ですね。

最後の機能ガラスで、皆さん聞き覚えがあるのは『エコガラス』という商品かも分かりませんけど…業界では『複層ガラス』って言われてまして。
2枚のガラスの間に乾燥剤が入った中空層を設けて、外側の熱を内側に伝えない、内側のエネルギーを外に出さないというような環境に優しい商品がございます。
大楽
この『エコガラス』ってどういったところで使われるんですか?
松田さん
一番身近なところで言うと、皆さんがお住まいの住宅の窓ガラス。
最近ですと大手ハウスメーカーさんとか、大手デベロッパーさんが建てられるマンションとか住宅は、新築については90%以上の普及率になってますね。

田巻
なんでガラスなのに『エコ』っていう名前が付くんですか?
松田さん
環境に優しいっていうところからかもしれませんし。あとはエアコンとか…例えば北海道の中で言うと灯油ですとか、そういうものの使用を少なくして室内の温度を保つという意味での『エコ』ですね。
あとは例えば窓ガラスに露(つゆ)がついたような。業界で言うと「結露」って言うんですけど、あれがしにくいんですよ。
大楽
確かに昔の窓ガラスってすごい結露してた気がしますね…!
松田さん
びしゃびしゃでしたよね。複層ガラス・エコガラスは結露しにくいという特徴がありますね。
ただ、皆さんが見上げるような二階三階の教室なんかは、複層ガラスになってることが多いんですけど、一階周りは複層というよりは安全性を重視した合わせガラスだったりのものを使われてますね。
大楽
何かぶつかったりといったときのためですね。
製品情報 | 機能ガラス素材・応用製品の提供を行う総合ガラス加工メーカー NBS(エヌビーエス) (nbstk.co.jp)
いま三つおっしゃったものの中、強化ガラスと複層ガラスと一緒になってるようなものも…?
松田さん
あります。
大楽
あるんですか!?
松田さん
あります。『強化』で、なおかつ『合わせ』にして。それを材料にして複層にする。ガラスを3枚使うと『強化合わせ複層』っていう…まぁスペシャルなガラス…複合商品と我々呼んでますけど。
それを一社で作れるってなかなかあまりないんですよね。その三種類のガラスを組み合わせて作るっていうのは総合加工工場じゃないとできないところですね。
大楽
エヌビーエス さんはそれができるということ。
松田さん
そうですね。
大楽
そういった意味で「総合ガラス加工メーカー」ということなんですね。
いろいろと知らないことがいっぱいありますね…!
田巻
こうやって私もガラスについて今まで深く考えた事がなかったんですけど…。一般の人に注目してもらうための工夫とかってされてるんですか?
松田さん
注目するとなるとですね…。
しゃがみこむと、ガラスの右下にどこで作った商品だとか、これは合わせガラスとか強化ガラスですっていう安全シールってものが貼られてるんですよ。ただ足元なので皆さんはしゃがみこんで見るようなことはしませんから…。
田巻
知らなかった…!
松田さん
僕らは、例えば車乗って高速道路でサービスエリアとか入るとやっぱりしゃがみこんで見たり。
マークを打刻されてるので、ちょっとライバル会社のガラスだなとか、これはうちの会社だなとか言ってニコッとしたり。
田巻
それは下の方にあるんですか?
松田さん ほんともう下の方です。
大楽
いや絶対わからないですね。
松田さん
わからない。
田巻
今度着目してみてみようかな!マークを!
松田さん
マークとか、あとはシールが貼ってありますね。これだったら強化、これだったら合わせだとか。
大楽
そのぐらい分からないっていうか…意識してないと見られないということですね。
田巻
最近建物とか一面ガラス張りで。大きいガラスとかあると思うんですけど…どのようにして運んだりしてるんですか?
松田さん
我々は素材からガラスをつくっているわけではないので、素材は国内大手三メーカーさんがいらっしゃってて、そのメーカーさんがシート状のガラスを作っていただけます。それを運んでいただくのもトラックなんですよね。で、輸送するときは専用の鉄製の『パレット』っていうガラス専用の容器があったり。容器に入らなければ木箱を作って、木箱にガラスを入れてトラックで運びます。
大楽
今まで実際に注文とかがあって、こんなの作んなくちゃいけないの⁉とか、そういったものってありますか?こういう発注⁉とか。
田巻
気になる!
松田さん
あー…、合わせガラスの中に電気を通す線を入れて、中でちっちゃなライトを光らせてくれとか…。
田巻
そんなのできるんですか?
松田さん
うーん、できますね。
大楽
今ちょっとあまり表情が曇ってるからあまりつくりたくはないなあみたいな…(笑)
松田さん
失敗する可能性が非常に高いですね。
例えばいろんな高級ブランドって銀座に並んでると思うんですけど。あそこ夜歩くとだいたい光ってますよ、壁面が。
大楽
確かに…!
松田さん
あれは間接照明だったり、あとはガラス素材を光らせてたり、いろんな照明の当て方があったりするので。結構難しいガラスですね。
大楽
これからのシーズンのクリスマス近づいて、だんだん装飾とかも華やかになってくじゃないんですか。それ見る時にね、これが松田さんのおっしゃってた苦労がすごくあるんだろうだろうなって!
田巻
考えちゃう!ほとんどオーダーメイドなんですか?
松田さん
オーダーメイドです。
同じものを何万枚って作ってる会社ではないですね。
大楽
発注があってそれによってということですね。いろんなご苦労があるんですね。
松田さん
でもやはり、自分が作ったガラスがここの建物のここに入ってるっていうのが分かるだけで、やりがいっていうのはありますよね。
同じものを何万枚何千枚作っててどこに行ったか分からないようなものを作るよりは、自分が携わったものがビルのメインとなるところを飾っていただいてるわけなので。それも20年も30年もその状態が続くので、そういうやりがいってものは随分ありますね。

大楽
ここからは福島との関わりについてお話をお聞きしていきたいんですけど…。
来年1月に双葉郡楢葉町に加工工場がオープンということで、この広さが日本最大級ということで注目されてますよね。どのぐらいの広さなんですか?
松田さん
敷地面積としては16000坪ほどで、東京ドームで例えると東京ドーム1.5個ぶんぐらいの面積の土地になります。
大楽 田巻
広い!

大楽
なぜ楢葉町を選ばれたんですか?
松田さん
どこにしようかって考えてた時に、我々今までは富山で作ってたんですけど。フロートメーカーさんが太平洋側にあるということで。富山にガラスを持ってって、そこで加工したものをまた首都圏に戻すというよりは、やはりフロートメーカーさんがある太平洋側でどこかいいとこはないかな…っていうふうな探し方をしてたんですね。
その時、経済産業省さんの「自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金」があると。
で、なおかつ福島、なにか役に立てないかな、お手伝いできることはないかなっていうものもあって。そこに企業誘致があったので決めたっていうのが経緯でしょうかね。
自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金のページ - 福島県ホームページ (fukushima.lg.jp)
大楽
なるほど。
田巻
ちなみにこの工場ではどのような製品を製造される予定なんですか?
松田さん
先ほどお話がありました、機能ガラス商品…『強化』『合わせ』それから『エコガラス/複層ガラス』ですね。この三つになりますけども…。
先程お話がありました日本最大級っていうのが、ひとつの工場で切断から強化・合わせ・複層という、一貫製造できる工場っていう意味では日本最大級になりますね。
今までは、我々富山の工場でもそうなんですけど、やはりこう設備を入れる時に、最初から大きな建物があるわけじゃなくって。ここで成功したからじゃあ次の土地を買って工場を建ててっていうふうに、三つも四つも工場が分かれてるんですよ。そうすると、一つの製品を作るのに工場をまたいでまたいで…っていうことで生産効率も非常に悪いんですね。
今こちらで建ててる工場っていうのは、全ての設備がこの工場の中に集約されてるので、非常に生産効率も高い。
それにロボット化も進めてますので、そういう面では、今までは人の手でガラスを持ったり起こしたりっていう作業が多かったんですけど。この工場の中では、中心がロボットではないんですけど、人間を補助する形でロボットがメインで動いていくという形になりますね。
大楽
これはロボットを使うと、効率や安全性も高まるんですか?
松田さん
高まりますね。
中で扱うガラスが一番大きいものだと3 m ×12m ぐらい。1枚が。
大楽
えっ、3 m ×12m ⁉
田巻
1枚で?
松田さん
1枚で。それを製造できる設備がこの中にあるので。そうなるともう1枚2tとか3tっていう。1枚のガラスの重さがですね。
それはもう人の手で持てるようなものではないので、そこは自動化して、人に負担をかけず。なおかつ、動かせば動かすほどガラスって傷が入ったり欠けたりするので、それを自動化の中でスムーズに動かすというふうになりますね。
大楽
地元の方の雇用はどうなるのかなと。
松田さん
これもですね、先ほど申し上げた経済産業省さんからの補助金に「帰還支援」「雇用喪失」っていう文字が入ってるんですね。
やはりいかに福島の楢葉に戻って来て頂いて、一度震災の時にお出になった方々をいかにして戻すか。っていうのは、企業がないと、働く場所がないと戻ってくる場所がないわけですよね。
大楽
そうですね。
松田さん
それに少しでもお役に立てればっていうことで選んだってのはもちろんありますけど。
今この補助金事業で言うと、70名以上の福島県の住民の方を雇用しましょうというのが補助金の前提条件に1個あります。
大楽
これは全部でどのくらいの人が働かれてるんですか?
松田さん
そうですね、まだ全体的にすべての設備が稼働してるわけではないので部分的ですけど、現在で55名ですね。その都度その都度、雇用を増やしていって最大で150名ぐらいかなと思いますね。
田巻
この募集って、エヌビーエスさんのホームページで開示されてるんですか?
松田さん
開示されています。
大楽
ぜひ双葉郡の、浜通りの雇用を増やすためにもお願いします!
田巻
もう一つ聞いていいですか?
私、大学でSDGsについて勉強してるんですけど、製造するにあたって環境に気を付けていることはありますか?
松田さん
私どもの工場で作ったガラスで、大きなガラスから製品のサイズに切り取った後に残っちゃう部分があるんです。それを一回ガラス加工工場からガラスメーカーさんの方に余ったガラスを戻すんですね。それをもう1回砕いて、新しいフロートガラスを作るときに一部材料として混入して、シートにするということで言うと、再利用ですね。
田巻
ごみを増やさない。
松田さん
そうですね。そういったことをしています。
今回は 株式会社 エヌビーエス 常務取締役 松田俊明さんにお話を伺ってきました。
松田さんありがとうございました!!
編集後記
● 『強化』『合わせ』『複層』 …機能ガラスを一社で製造できるのが、エヌビーエスが総合ガラス加工メーカーたる所以。
●日本最大級!楢葉町に誕生する東日本工場が福島の雇用・復興を支える。「自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金」を活用。
● 難しい発注があっても、自分が携わったものが20年も30年もビルのメインを飾ることがやりがいになる。
●ゲストの松田さんが話すガラス加工のトリビアや職業あるあるにブース内とても盛り上がっていました。
収録後、私も大きなガラスを見つけたらついついしゃがみこんでマークを探しています。
(HP担当)
田巻
今回は…
「楢葉町に誕生する日本最大級のガラス加工工場に注目」です!
今回はガラスの話題ということで…どんなところに使われているのかなと改めて考えてみたんですけど。
自分の部屋の中を見渡したところではテーブルとか窓ガラス、そして外へ出ると駅や商業施設など…今の建物にはガラスを使ったところがとても多いなと感じました!