今週のゲスト:南相馬市原町区の機械設計会社 YUBITOMA(ユビトマ)代表 「MISORA」製作のチームリーダー 五十嵐伸一さん

大楽
前回は、南相馬市の企業11社で クローラー型ロボット「MISORA」を開発した、そのいきさつのお話や、「ワールドロボットサミット2020」の福島大会のお話を伺いましたね。

大楽
そんな五十嵐さんは技術士としての顔だけでなく、労働安全や知財管理も専門とされているそう。
「ものづくり」に対して、あらゆる面からこだわりをお持ちの五十嵐さん。そんなお人柄についても触れて行きたいと思います。

田巻
今週もリモート収録でお届けしていきます。よろしくお願いします!

五十嵐さん
はい!よろしくお願いします!
五十嵐さんの「いま」につながる多様な経歴
大楽
それではまずは五十嵐さんのプロフィールをご紹介していきたいと思います。
1955年生まれ、福島県南相馬市出身。茨城大学工学部卒業。日本国有鉄道、国鉄に入社。東北新幹線の開業に携わります。
日本オートマチックマシン(株)を経て、2015年より南相馬市原町区に「YUBITOMA」を設立。
「YUBITOMA」 http://yubitoma.lomo.jp/
産業機械設計および組立作業業務を手掛けるほか、コンサルタント業務も展開。
南相馬ロボット産業協議会会長。日本労働安全衛生コンサルタント会福島支部理事も兼任。
MISORA WRS(ワールドロボットサミット)チームリーダー。
…ということで、すごいですねいろんな経歴が。
田巻
ほんとにすごい!
五十嵐さんの経歴を拝見すると、技術士だけではなく、ものづくりに関するあらゆる業務に関わっていらっしゃいますが、やはりそれまでの経験が「YUBITOMA」での事業につながっているんですかね?
五十嵐さん
一番最初に入ったのが国鉄で、まだ民営化される前なんですけれども。
そこで東北に新幹線を走らせるということで、私が運転関係の担当になりまして。
そこで新幹線の乗務員を仙台の管理局の方に持ってくる研修をどうするかだとか、車両基地の整備をする体制をどうするかとか、乗務員の勤務をどうするかとか…。そういうふうな、まだ下っ端だったので細いところの仕事をやっていました。
また、その当時国鉄には労働組合が5つほどありまして、その組合との団体交渉の記録をまとめるだとか、納税に対する回答をまとめるだとか、そんなふうな仕事をしておりました。
で、新幹線を走らせる暫定開業が『大宮ー盛岡間』で開始したわけですけども、1982年、昭和57年の…忘れもしない、6月23日ですね。その始発が6時40分なんですが、その数時間前の朝3時まで組合と団体交渉して、やっと妥結してそのままの足で仙台駅で見送ったと…。これは思わず胸がジーンとした記憶が残っております。
そんなふうなものを経て、日本オートマチックマシンに入社しまして、そこで設計業務と製造業務、そんなものをやりまして、今「YUBITOMA」ということで、現役の時に培っただろうという技術を活用して、少しでも世の中のためになればいいなということで仕事しているところでございます。

五十嵐伸一さん
田巻
現在のYUBITOMAでのこだわり、お話いただけますか?
五十嵐さん
「YUBITOMA」で三つのものを立てました。
ひとつは、ものづくりを通して世の中に育てていただいた恩をお返しすると。
そういう意味で、自分が作ったものを何か世の中に実装して使っていただければいいなと、そんなことでやっていこうというのはひとつ。
そして労働安全の部分で。ものを作ることで収入を得て生活の糧を得ている…にもかかわらず、労働災害で最悪命を落とすことだとか、特に製造による場合は、命まで落とさなくても挟まれ巻き込まれというのが約50%を占めてますので、そこと体に支障をきたす…そういうふうに災害になってしまうので、それは是非なくしたいなと。私が経験した部分を少しでも企業の方々にお話できて、一件でも無くせればいいなということで取り組んでいます。
あともう一つは、今まで培った技術などを若い技術者に伝えていきたいと、そんなふうに思っていまして。
今こちらに「テクノアカデミー浜」という職業学校。高校卒業した方が2年間勉強するという学校があるんですが、そこでものづくりの工場をいくつか持って教えていますし、卒業で作る実習のものづくり、そんなふうな指導もしているところです。
テクノアカデミー浜 https://www.tc-hama.ac.jp/
大楽
いろいろと社会人として感じた問題点とか経験されたことを「YUBITOMA」で形にしたい、今の社会に還元したいということなんですね。
「YUBITOMA」の未来
田巻
五十嵐さんが描く未来、「YUBITOMA」の未来についてお話ししてください!
五十嵐さん
製造業の従事者の減少、非常に速いスピードなんですね。
例えば平成17年と平成12年の製造業従事者のデータがあるんですけども、なんと154万人が減ってるんです。
大楽 田巻
そんなに!?
五十嵐さん
日本側が外貨を稼ぐためにはなにかというと、例えば鉄鉱石を1トン買ってくるとだいたい7000円ぐらいで買えるんですが、それが車になると1トンで150万か200万円になるんです。
その付加価値というものが、製造業で生み出して、日本の原動力になっているという風に…ある点から見るとそうなるわけですけれど。
でも、その製造業に従事する人が少なくなってきてっていう、これはちょっと危機的状態なのかなというぐらいに私思っていまして。私の残された時間で、子供達や若い人たちに、製造業の面白みを伝えて、そして製造業に携わっていただきたいなと。そんなふうな想いを持っています。
技術の伝承と合わせてですね、人づくりをしていかないと本当に使ってもらえるようなものづくりり、製品としては使えないということで。
私がいつも思っているのは、尊敬してる人に丹羽保次郎(にわ やすじろう)さんという、FAXを初めて作った方がいて、東京電機大学の初代学長なんですが。
丹羽保次郎-東京電機大学初代学長https://www.dendai.ac.jp/about/tdu/history/niwa_yasujiro.html
その方が「円満な人格を持った技術によって作られた製品は実によくできている」と。
でも、「仕事に不熱心な人の製品は多くの欠陥があるんだよ」というふうにおっしゃっていて。
私の経験上まさしくそうだなと、そんなふうに思っています。
人づくりの部分と、あと技術を伝承する部分と、この両輪で若い人たちに伝えていきたいなと思っています。
大楽
モノを作るために、その前段階として人をちゃんと育てなくちゃいけないということですよね。
五十嵐さん
そうですね。

田巻
最後に、福島県と一緒に描く未来についてお話しいただけますか。
五十嵐さん
福島県は、モノづくりに対してものすごく力を入れています。全国でも一番じゃないかと私は思っているくらいなんですが。
ひとつは、いま南相馬で作ってる「南相馬ロボット産業協議会」。
南相馬ロボット産業協議会 https://minami-soma-ric.jp/
その上部機関に「ふくしまロボット産業推進協議会」というものがあります。
ふくしまロボット産業推進協議会 https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/32021f/robot-conference.html
それが今から四年前くらいに立ち上がったんですが、今は368社が加盟してます。
そこにはロボット部材開発検討会、ロボット・ソフトウエア検討会、廃炉・災害対応ロボット研究会、ドローン活用検討会…と四つの検討会が入ってて、各企業がメンバーになっていろいろ検討しているところ、活動してるところなんですが、それが一つとですね。
あとは「ふくいろキラリ」事業と言ってですね。
ふくいろキラリhttp://fukuiro-kirari.jp/
これは2013年から東北大学の堀切川(ほっきりがわ)先生という素晴らしい先生をお迎えして、毎月1回企業に訪問をして、開発途中だとか開発で悩んでることだとか、そういうところの技術相談をやってるんです。
私も先生と一緒に回って、サーブアドバイザーという形で企業を回らせてもらっているんですが、2013年に始まって、今8年経ってますけども、それで製品化したのは55件。技術相談したのは355件ということで、毎月毎月地道な活動を8年間続けている。そのなかで製品化した企業も、製品もあるということです。
そんなふうに、ロボットに限らず、ものづくりのベースがしっかりした福島県のものづくりを築けていける、そのひとつの一助になれればいいなとそんなに思ってます。
2週にわたって、「YUBITOMA(ユビトマ)」代表 五十嵐伸一さんにお話伺ってきました。
ありがとうございました!

田巻
今回も、南相馬市原町区の機械設計会社、YUBITOMA(ユビトマ)代表 五十嵐伸一さんにお話伺っていきます!